第2話 日常(2)

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 中学校から行きつけのスーパーへ向かい、タイムセールで無事にお目当ての商品を購入出来て先程よりも機嫌が良くなるナツ。

 ナツと反比例するように機嫌が悪くなっているアキ。


「はぁー、結局間に合ったじゃん」

「ギリギリに行ってどうすんだよ。モタモタしてたら主婦のおばちゃん方に良い商品取られちゃうだろ」

「ナツは主婦じゃないでしょ」

「うるせぇな。今からこういう買い物とかちゃんとしてたら大人になった時、困らないだろ」

「一人で行けば良いのに。あーぁ、さっきの怖い話最後まで聞きたかったなー」


 アキが不機嫌なのはタイムセールに付き合わされたことではなく、怖い話の結末が知れなかったことのようだ。


「お前な、ああいう話を易々聞くんじゃねぇよ」

「ナツは心霊現象とか怖い系ダメだもんね」

「オレじゃなくて、こわ…怪談話すると寄って来るって言うだろ」

「何が?」

「幽霊」

「ぶふっ」


 真面目に答えるナツに吹き出すアキ。


「…なんだよ」

「あははっ、ナツったらそんな迷信信じてんの? お子ちゃまだねぇ~」

「ざけんな。オレはお前の兄だぞ」

「あたしより10分足らず早く産まれて来たからって兄貴面されてもね」

「オレの方が1日早い」

「たまたま日にち跨いだだけじゃん」


 ナツとアキは双子だが、誕生日は1日違いだ。

 兄のナツは8月31日生まれで、妹のアキは9月1日生まれである。

 だから、二人の名前にはそれぞれ生まれた季節を表す“夏”と“秋”が入っている。


「何でも良いけど、あたしの交遊関係に口出ししないでよね。友だちいないナツと違って、あたしは友だちを大事にしてるんだから」

「失礼な奴だな。オレにだって友だちくらいいるわ」

「本当~?」


 ニヤニヤしながらナツを見るアキを、睨み返すナツ。


「オレはお前と違って友だちとはその場限りの広く浅くじゃなくて、狭く深い付き合いなんだよ」

「ナツの方が失礼じゃん!」

「先に失礼なこと言ったのはアキだろ。交遊関係についてはオレだっていちいち口出しする気はねぇよ。でも、怪談話はダメだ。マジで寄って来たらどうするんだ」

「怪談話に幽霊が寄って来て、呪われたとか聞いたことないんだけど。ナツってば、小心者だよね」

「しつけぇな。この話終わり。帰ったらお前も夕飯の手伝いしろよ。今日は母さん夜勤でオレたちしかいないんだから」

「分かってる」


 単身赴任中の父と看護師で夜勤がある母。

 今日のように母がいない夜は二人で夕飯を作って過ごすのが日課になっていた。


「あ、野菜の皮はちゃんと剥けよ」

「剥くよ!」

「そう言ってこの前も忘れただろ。ピーラー使って良いから」

「怒るよ?」


 購入した食材が入った色違いのエコバックを一つずつ持ちながら帰路につくナツとアキ。

 普段は別々に帰宅するが、二人にとって一ヶ月に数回ある一緒に帰る日。

 文句を言い合いながらも当番制にしたり、止めたりせずに二人で続けているのは本当に嫌ではないからなのだろう。


 この日常が壊れる日が徐々に迫って来てることを、二人は知らない。


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