第一章 感情を無くした少年 5

 【感情】それは、心の状態を表す概念だ。


そんな物は魔王を殺す時には不要。


むしろ要らぬ感情は時に決断を悪い方向へと導く。


自分でも分かっていたし、大人達にも散々言われたセリフだ。


それを今更取り戻せだと?一体魔王は何を考えているのだろう。


「魔王は、何故そんな事を俺にした?」


 僕は剣をしまい、奴の元まで歩いて行った


「それは…………貴様の屈辱と絶望に満ちた顔を見たいから。だってよ」


「それじゃお前は何なんだ?それ程の力を持っていながら何故人間の達を襲わない?そもそもいま魔王はどうしているんだ?」


 質問攻めをされ、少々戸惑うクルシェ。だが勇者は質問を止める事は無かった


「人間界は今何を目的として活動している?10万年たった今新しい勇者は誕生しているのか?何故魔族は以前の魔王並に強くなれたんだ?」


「ちょ!ストッッッップ!!!」


「?」


 いつの間にか奴を押し倒しており、僕と奴の距離は鼻と鼻がくっつく程近づいていた。


「何だ?何故答えない」


 クルシェは下唇を甘噛みし、頬を赤らめた。


視線は勇者に釘付け


「だ、ダメ///……」


 恥ずかしながらも色っぽい声を出し、まさに【魅惑】に相応しい振る舞いをしてきた。


が、そんな物は勇者には通用しない。


続けて質問を続ける


「おい真面目に答えろ。そんな色気の無い魅惑を使っても僕には通用しないぞ」


「…………あ゛?」


 その言葉を聞いたクルシェは顔色を変え、勇者を勢いよく蹴り飛ばし早速と立ち上がった。


「私は……可愛いでしょ!色気ムンムンでしょ!!!!!!そんな事も分からない愚かな貴方には力づくで分からせるしか無いみたいね!魔王様からお前を無事に我が学園へ招待しろって言われてだけど……辞めた!もうこの場で殺す!」


 先程までの穏やかな表情は一切消え。


目の前の勇者を本気で殺そうと魔法を唱えた。


「〈【ダークロスト】〉」


その魔法を聞くと勇者は顔色を変え、より一層クルシェを警戒した。理由は一つ


「何故.......お前が魔王の魔法を使える?」

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