第46話
47 王宮突入
毒島を撃破したのち、俺達は王宮へと潜入することになった。
王宮潜入の段になって、マリカが合流してくる。
「アルト様。ニルヴァーナ王女とデズモンドの抗争の中ですが、デズモンド王と姫宮イバラが二手に別れているようです」
マリカの証言によって俺達は、方針を決める。
「あと……。ラビの消息ですが、地下室に捕らわれていると。捕らわれたのは私の失態です。すみません」
「いや。マリカは立派なアサシンだ。それだけ王宮の戦力が集中しているということだろう」
「部隊の采配はすでに伝えておきました。アルト様は私と共に地下室に向かいましょう。ラビを回収したのち、合流していただきます」
アサシンなのに、心がある人だった。
「ありがとう、マリカ。イバラはどこにいる?」
「塔の頂上です」
ラビを助けたらイバラの元にいく予定だが、地下室に行ってから頂上にいくことになる。
タキナ、マリカと三人で王宮地下室へと進んだ。
守備の軍勢が立ちはだかる。
俺は竜の肺をかざす。
「どけよ。俺の道だ」
竜の肺はドラゴンブレスを外付けで放てるというものだった。
ぼうぅう、と火炎放射の要領で、鎧の兵士を焼き尽くしていく。
「アルト様。城まで燃えてしまいます」
「ならば凍結だ」
凍結ブレスで、炎を中和していく。
竜の肺は竜のブレスを武器化したものだった。回数制限はあり、俺のブレスよりも弱いが喉を痛めない点が良かった。
地下室の入り口に、辿り着くとひとりの男が立ちはだかる。
「こんにちは。99期転移者。魔山紫苑といいます。地下室の少女は逃がしておきましたよ」
「魔山ぁ!」
タキナが激昂する。
彼女を追放した張本人だと聞いていた。
「タキナ。冷静になれ」
「……わかったよ。あんたも冷静だったからな」
「魔山と言ったな。ラビをどこにやったんだ?」
「彼女は最上階、イバラ様のもとに行きました」
「私の能力は信頼ですがイバラ様には逆らえ……。イバラ様万歳!」
「どういうことだ?」
「このように、いまや私は、イバラ様の魅了催眠によって、信頼の力を使うことさえできません」
「魅了催眠? あいつの能力が?」
「立ち向かうのはおすすめしませんよ。彼女を美しいと思う人間は、すべてが催眠下に入ります。いまの私のように、情報を人にいうくらいはできるようですがね。イバラ様万歳!」
「いいでしょう、タキナさん。今ではあなたを追放したことを後悔しているのですよ。
こんなことになるなんて」
「悪いアルト。先にいってくれ。こいつとは殴り合いのステゴロをする! おらぁ!」
「ぐっふぅ!」
タキナはすでに拳を振るっていた。
魔山は青白い顔をさらに蒼白にし、タキナにやられる。
一方的な戦闘になっていたが、タキナもまた街に入れなかったのだ。
「死に晒せぇぇえ!!」
タキナが魔山をボコボコにしたのち、マリカが縄をだした。
「捕縛しておきましょう」
「はぁはぁ。くっそ。こんくらいじゃ足りねーんだがなぁ!」
「レーゼフェルン様が、法をつくれば、厳密に裁かれます。今は捕虜に」
「くっそぅ!」
タキナに敗北した魔山は、ぽつりと意味深なことを呟く。
「ラビさんのことは心配なく。牢屋に入っていましたが食事などは私が与えていました」
「そうか……」
「彼女はイバラ様と既知の間柄なためか、催眠がかからないようなのです。私はそこにかけたかった」
「感謝する」
魔山は敵だが、ラビを守ってくれていた。
マリカとタキナが魔山を連行する。
最後に、魔山はぽつりと呟いた。
「〈ゲームマスター〉の存在によって〈魔族〉が導入されようとしている」
「何?」
「イバラ様は、魔族導入の波に乗るつもりです。人の法など関係ない。圧倒的な魔族の暴力の世界を見越して、謀反を起こしたのでしょう」
「そうか。なら止めないとな」
「あなたでは難しいでしょうがね。ラビさんだけは連れ戻してください」
「どういうことだ? 逃がしたんじゃ亡いのか?」
「あなたのために、先にイバラ様のもとに向かったようです」
「ふたりとも。後は頼んだ! 俺はラビを助けにいく!」
「任せな! すぐに合流する」
タキナの声を背に、俺は塔の頂上目指して駆けだした。
イバラと対面できるが、それ以上に俺はラビのことが心配でたまらなかった。
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