第42話 毒島の力
「力の差を思い知らせてやるよ! あのときみたいになぁ!」
俺にふいうちを回避された毒島は、ステータスを開示しつつ迫ってくる。
毒島アキラ レベル99【剛戦士】
HP 6800
MP 880
TP 780
攻撃 1999
防御 1500
魔攻 560
魔防 550
素早さ 600
運命力 3000
体格 300
移動 25
【バイタル】グリーン
【スキル】超筋力
【アビリティ】強健、剛運、経験値三倍、超装甲、恫喝支配、恐怖支配、恫喝動員、恐怖動員
【ギフト】略奪適性、統率力
「へぇ。鍛えたじゃないか」
「余裕ぶってんじゃねえよ! 肺活量ぉ!」
毒島の周囲の兵士は完全に統率された動きで俺を囲んでくる。
「お前らぁ、こいつを狙え! 肺活量君っていう追放者にすぎねーんだよ!」
毒島の一声で兵士のヘイトが俺に向かってきた。
「フィジカルブレス」
俺は息弾を絶え間なく放射し、配下を呼吸で吹き飛ばしていく。
『まずは雑魚からだ』と思ったが、何故か雑魚は減る気配がない。
この戦場の兵士が、毒島の動員によって俺に吸い寄せられているようだった。
「てめーは〈動員〉を舐めてんだろ? 俺のこの力と演説力はヒトラーと同等の力を持っている」
俺は毒島の動員を理解する。
つまりこの戦場の人間が、毒島のいうことを聞くと言うことだ。
迫り来る五人小隊のうち四人を、俺は呼吸強化の剣で斬殺する。
『ギャアアアア!』
『ヤッダバアア!』
『エッファアァア』
最後の一人に尋ねてみる。
「なあ。あいつのどこがいいんだ?」
「毒島さんは最高の人間だからだ!」
「応えになってねーよ。言わされてるだけじゃねーのか?」
「でも。皆そう言ってる!」
「馬鹿の言うことを聞くから死ぬ嵌めになる」
俺は容赦がない。
身体強化によって、兜の上、鎧の上から兵士を両断していく。
俺が攻撃をした隙をみて、毒島がバトルアクスを振り下ろした。
「ひゃっはああぁああ! あぐぅ!」
俺の息弾で毒島は流血する。
もはや敵ではない。レベルが99だろうが関係ない。
「ステータスが追いついてないんだよ」
とどめを刺そうと、剣を振りかぶると、雑魚兵士がゾンビのごとく毒島の前にでて肉の縦になる。
「ありがとう、俺のために死んでくれて!」
俺に真っ二つに切り裂かれる兵士を見ながら、毒島は俺を煽ってくる。
タイマンなら瞬殺していただろう。
だが毒島の〈動員〉能力は侮れないものがある。
「この……。人殺し!」
なんと言われようと俺は構わない。
「こいつは人の心がない。人間じゃないんだ。人殺しを、殺せぇ!」
『毒島さんのいうとおりだ!』
『肺活量を殺せば、戦争は終わる!』
迫り来る30人の兵士を俺は切り伏せる。
さらに迫り来る20人の兵士を俺は切り伏せる。
さらにさらに迫り来る45人の兵士を俺は切り伏せる。
「そろそろ疲れただろ? 物量作戦で呼吸が乱れてるぜ?」
毒島の作戦はある程度は俺に通用していた。「ふぅ」
息を整えて回復する。
俺の周囲に、さらに200人の兵士が取り囲んでくる。
毒島の配下に俺はもう一度尋ねてみる。
「お前らさ。あいつのどこがいいの? もう100人近く切ったんだけどさ」
兵士のひとりが口を開く。
『内心忸怩たる思いだが!』
『空気には抗えないのだ!』
『毒島さんは素晴らしい人なんだよ!』
「お前らを肉の壁にしてんじゃん」
『すばらしい人だから、肉の壁になってもいいんだよ!』
「信じられないな。クズに従うしかないなんて」
「くくく。なんとでもいえ。これが現実だ」
毒島は200人の配下の前で、本音をさらけ出す。
「部下の前で言っちゃっていいのか?」
「いいんだよ。俺の動員能力はすべてが上手くいく力だからな。こいつらの武器だって諸外国から、最上の品を『おねだり』して貰った」
「おねだりって。赤ちゃん並みの行動原理しかないんだな」
「そうだ。俺はおねだりをすればすべてがうまくいく。命令をしてもすべてがうまくいく。俺に従う。すべてが俺の思い通りになる。これが〈動員〉を極めた俺の力だ」
配下の兵士がさらに俺を囲む。
「馬鹿に従う馬鹿が200人か。殺しても殺してもキリがねえな」
「概念干渉の能力は最強だ。戦闘力なんてのは二の次なんだよ」
無理に剣をつかったせいか、ゼルムから貰った剣はすでに綻びていた。
だがレベルアップしたことで俺もまた概念干渉を使えるようになっている。
――概念干渉を起動しますか?
呼吸の神髄へと俺は到達しようとしていた。
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