独り真夜中
真夜中は、綺麗だ。
私は今までの人生で数多くの奇跡を見た。それは自然に関するものだった。
何も見えない。
何も分からない。
何も確認できない。
けれど、私と私以外のものの境界は嫌と言うほどに感じられる。
自分が真夜中の一部になっている。だというのに、溶け込めていないことがより深い恐怖や思考に繋がっていく。
会話にも似ているような気がする。
取り込まれてはいるが、融合していない。
自分というものを持っていると言えるのか。自分以外のものを受け入れないようにとする心の動きが過剰と言えるのか。分からない。
星が見える。
白くて、透明である。暗闇が裏に待ち構えている。
星座というものがあるが、よくあんな形で白鳥だ、髪の毛だ、双子だ、蠍だ、とできるものだ。どう考えても、ただの点である。妄想で結んだから何だと言うのか。昔の人の想像力の豊かさに感服するというよりも、真夜中に暇を持て余した人間たちの時間の潰し方は今も昔も不毛でしかないことに感動すら覚える。
もし、このまま真夜中が私を迎えに来たらどうなるというのだろう。
あぁ、死ぬのか。それはさすがに、夜に、黒に還るということなのか。
眠っている時に、意識があるのかないのか分からない時がある。
今、分かった。
あれが、死ぬ瞬間なのだ。
私が私ではなくなる、その時の感覚。
あれを味わっているのだ。
そうか、なるほど。
人間が毎晩眠るのは、いつか死ぬときの予行練習なのだ。
上手に意識を失えるようになれば、死に損なわなくて済む。
一番怖いことは、生きている間に起きることであって、死ではないのだ。生きている限り、恐怖し続けなければならないし、避けなければならない。でも、死ねば恐怖しなくていいし、過剰に反応する必要もない。
私には、死がお似合いだ。
会話も下手なんだろうし、すればするほど周りに伝わってしまう。だったら、恥の上塗りの前に、消えてしまうのが一番正しいように思える。
どのタイミングで死ぬのがいいのか。
私が意識していないくらいがいい気がする。前もって、勘づいてしまうと気構えてしまう。そうしたら、途端に恐怖がやってきて私を食ってしまうことだろう。
だとすると。
そうか。
今、この瞬間がベストだったのだ。
もう、考えてしまったので、無意味ということになる。だが、意識の外からこちらの顔色を伺うこともなくやって来て、命を奪ってほしい。
星を見て思う。春夏秋冬。どれも良い季節だ。
私は夜のおかげで、時間を愛せるようになったのだ。
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