第62話 戦争終結

 アイリスとジーンとアルファがリリアムのドームの上に立ち遠くの空を見つめている。ジーンが言う。


「アルファ、あなたまで来なくてもいいのに」

「いや、俺のシールドで少しでも防御ができれば」


「そう、ありがとう。アルファ、アイリス。あなた達のクローンがコールドスリープカプセルで保護されている。記憶も移植した。未来であなた達は復活するわよ」


「ジーン、あなたは?」

「さあね。私はどうでもいい。償いが必要」


「リリアムの人、どれくらい守れるかな?」

「三人いるからね。頑張りましょう。さあ来たわよ」


 遠い空に幾筋もの光がこちらに向かっている。ベータの対空迎撃システムが10発の内8発を上空で破壊した。しかし二発がすり抜けて飛んできている。


 アイリスが最大級の衝撃波を電子ビームのように1発に向けて発射した。

 ジーンがやはりもう一発に衝撃波を発射した。

 アルファが最高強度のシールドを張った。


 次の瞬間、ミサイルが炸裂した。

 真っ白な光が全てを包み、遅れて轟音がとどろいた。



 ◇ ◇ ◇



 リリアムは無傷だった。アイリスとジーンは2発とも破壊したのだ。


 しかし、3人の姿は残らなかった……


 シールドはおそらく彼ら自身には利かなかったのだろう。サーシャは呟いた。


「ジーン、アイリス、そしてアルファ…… ありがとうございました。そしてさようなら」

 

 メレオン島でモニターでその様子を見ていたレナとスカイは、ただ涙を流すだけだった。



 ◇ ◇ ◇



 X国は敗北を宣言し戦争は終結した。しかし、これでアルファ種がほぼ絶滅するのは確実となった。世界はベータを中心に再構築されることになった。


 サーシャが人類で最初の世界統一指導者に選任された。


 ベータの人民はジーンとサーシャの意思を守り、平和な世界を作ることを心掛けた。


 サーシャ以外にメレオンに希少種が生き残ることを知っている者はあまりいなかった。


 また、サーシャ以外に数台のコールドスリープカプセルの人間が長い時間眠っていることを知っている者もあまりいなかった。カプセルを自らの寿命まで見守ったのはキリーだった。


 レナとスカイはメレオンに新しい世界を着々と築いていった。新しい世界は素晴らしい世界だった。


 そして世界の時間はゆっくりと過ぎて行った。アルファ種はゆっくりと絶滅しベータ種の時代がゆっくりと訪れたのだった。

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