第59話 核、暗殺、ウィルス
「どうしたんだ、なぜ核ミサイルが発射されない?」
アマンが制御担当者に叫ぶ。担当者は青ざめて原因を調べ始める。
「お待ちください。すぐに調べます」
「何なんだ!」
待ちきれずアマンが叫ぶ。
二分ほどで担当が原因を突き止めた。
「起動プログラムが一部修正されています。一基ずつリロードが必要です」
「早くやれ!」
その時、キリーが制御室に入ってきた。
「首相!」
「キリー、核を使う。ベータのアサシンはどうにかなるか?」
「応戦しています。首相、核はだめです。被害が大きすぎて収拾がつかなくなる!」
「もう決めた。あいつらは生かしておけない。今この手で抹殺するんだ」
「首相、落ち着いてください。まだその段階ではありません」
「俺はもうすぐアサシンに殺される運命なんだ」
「誰がそんな事?」
「サーシャは予知能力を持っている。やつが言ったんだ」
「ブラフです。騙されないで」
「どうでもいい。どうせ使うつもりだったんだ。おい、まだ修正できないのか?」
「もう少しで一基目のリロードが完了します」
キリーが護身用のスタンガンでその担当者を撃った。別の担当者が倒れた担当を介助する。
「何をする!」アマンが叫んで腰から銃を取り出した。
するとキリーがポケットから何かを取り出してアマンに見せた。
「首相、両手を上げてください。これは特殊なウイルスを放出する起動装置です。ウイルスは2種類。人類が絶滅するウイルスの拡散装置が世界各地にセットされています。もう一種類はこの装置自身から放出される致死性の毒性ウイルスです。30分で絶命します。核の発射は止めてください。さもないとこのスイッチを押します。この部屋の人間は30分で死に、人類も滅亡します」
「キリー、何を考えているんだ。裏切るのか?」
そう言いながらアマンは銃を持った手をゆっくり上に挙げた。キりーが説得を続ける。
「人民を裏切ろうとしているのは首相の方です。核を使ったら取り返しがつかないことになります。思いとどまってください」
「くっ」
アマンは最も信頼していた部下の思わぬ行動に動揺した。この様子は遠くリリアムのジーン達も把握しており、その展開を息を飲んで覗っていた。最悪の事態だけは避けて欲しい。
また、この時、官邸の入口ではベータの暗殺部隊が侵入に成功していた。アマンを目指してここに近づきつつあった。アマンはキリーを見て穏やかな作り笑顔で言った。
「キリー。お前のような優秀な男は見たことが無い。本当に信頼していたんだぞ。まさかベータを守ようなことをするとは思わなかったよ。残念だ……」
その瞬間アマンの靴に隠された超小型銃から弾丸がキリーに向けて発射された。キリーは不意の銃撃になすすべがなかった。
「アマン、くそっ。やりやがったな……」
銃弾はキリーの腹部に命中した。血が服に広がり始めキリーは膝からくずれ落ちた。リリアムでは遠隔映像でキリーを見ていたサーシャ達が悲鳴を上げた。アイリスが叫び号泣する。
アマンはキリーの手からウイルスの放射起動装置を奪った。
「キリー、俺はサーシャの予言を覆したかもしれん。フハハ」
そして振り向いて核の制御担当に言った。
「さっさとリロードと発射準備を進めろ」
「はい」
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