第49話 停戦協議4日目

 四日目、アマンも一晩休んだおかげで何とか冷静さを取り戻した。三日目の進展がほぼなかったことから、今日は協定を結べるか勝負の日となりそうだった。


 個別の協議は、ほぼ平行線で歩み寄る余地はあまりなかった。ポイントとなりそうなのは協議が決裂した場合の、サーシャが言っていたX国への攻撃について両者がどうするのかという所だった。


 サーシャのX国首都攻撃宣言はアマンを強硬姿勢に向かわせるのに、これ以上ない導火線だった。


 「サーシャさん、昨日は少し動揺しましたが、私も一国の首相だ。この際自分の事はどうでもよい。あなたの過激な提案に対してはこう言わせてもらう。やれるもんならやってみろ、だ。ただし分かっているんだろうね? 我が首都が攻撃にさらされる事があるならば、我々はどんな手を使ってでもリリアムを徹底的に破壊する。強力だぞ。我が軍は史上最大の攻撃力を持つ。核だろうが化学兵器だろうが、何だって使う」


 強硬な姿勢のアマンに対して、サーシャもひるまない。


「本性を現したわね。あなた停戦する気なんか、はなから無いんでしょう。言っておきますけど、私達はX国の兵器の種類や配置をほとんど把握しているのよ。総力戦になったら負けるのはX国の方ですからね」


 二人の白熱した議論が続いた。他のメンバーは話を本来の停戦協議の方に戻そうと二人をなだめている。しかしアマンはサーシャに死期を告げられたせいか、自暴自棄的で総力戦を辞さないと言う姿勢を崩さない。策士のキリーがアマンにあるアイデアを提案した。


「首相。今晩リリアム内で収集中の情報を確認しておきます。それ次第ですが、ベータを攻略できる道筋が見つかったら、明日、一旦停戦に条件をつけて合意しましょう。それでベータ側を一旦安心させて、本格的な攻略を計画します」


「相手を油断させて、合意を破棄して攻撃するという事か?」

「はい」

「合意破棄は国際的にかなり避難を浴びるぞ」

「そうならないように条件を付けるんです」


 キリーが付加条件をアマンに説明した。


「なるほど、それならいい。それで進めよう」


 アマンも了承した。アルファはどうしたものか考え始めた。彼が考えるのはどう動けば被害を最小限に抑えられるかだった。

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