第45話 個別協議 Ⅲ ジーンとアルファ
―― 個別協議Ⅲ ジーンとアルファ ――
「私達は技術と人権についての交渉だったわね」
「そうだ。合意条件にうまく入れ込むことで互いの譲歩を少しでも増やす」
「私達の技術について、そんなネタになるものがあって?」
アルファはここまでの協議の状況から、アマンが停戦に合意する気が無いのが分かってきた。おそらくジーンもそれを感じているだろう。
「興味がある技術は豊富にあるが、正直アマンが妥協するに資する技術があるとは思えない」
「そのようね。何の為にこの交渉をやろうとしたのかしら?」
「キリーの入れ知恵のようだ」
「ふーん、なるほどね」
「人権については、かなり双方の隔たりが大きい」
「アマン首相は、はなからベータの人権を無視しているわね」
「そこは、アマンだけだ。キリーも俺も人権は保持すべきだと考えている」
「そちらからの譲歩は無し、か……」
ジーンは諦め顔だが、「一つ提案がある」とアルファが話し始めた。
「こちらに来るまでに一人で練った案の一つだ。本交渉で基本的にアマンが許容できるぎりぎりの条件でベータ側が合意するような考えがある」
「どんな考え? 人権無し、X国によるリリアムの占拠、そして徹底的な弾圧? 停戦協定じゃなくて、全面降伏せよってことよね」
「まあ、聞けって。停戦後のリリアムの管理はX国じゃなくて連合国が主導して行う。見た目は厳しいが実質的な中身は極力緩くする。それから技術は差しさわりの無いものをX国に提供する。目くらましだ。重要な技術はリークしないようにベータ内で管理する。そしてX国からは分離した情報共有ネットワークを構築する」
「ばれたらまずいものばかりじゃない」
「君の技術で何とかするんだ」
「他力ね」
「仕方が無い。君が一番優秀なんだ」
「お褒めいただきありがとう」
「ジーン、キリーが何か動こうとしている」
「そうなの?」(もう一部は知っているけど)
「ああ、会議が終ったら、何かが大きく動く」
「私達にプラスになることならいいわね」
「俺も詳しくは知らないが、X国の立場で動くわけではないらしい」
「期待しておくわ」
アルファの提案は客観的に妥当で、かつ締結可能と思われる内容だった。
しかしジーンの考えは違っていたのだった。
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