第41話 アイリスを派遣し首都攻撃を始めますよ!
二日目の交渉が始まった。
ベータ側はサーシャ、X国・連合国側はキリーが最初代表として協議していたが、アマンがあまりに口を挟むため、すぐにサーシャとアマンが直接対話する形となった。まずは停戦後のリリアムの統治が焦点となっている。
「アマン首相、先ほどから申し上げていますように、我々ベータはリリアム内における自治権は最低限必要なんです。無条件降伏に加えて、ベータの人権は認めない、リリアムの自治も認めないなんて、隷属しろって言っているようなものじゃないですか!」
「サーシャさん、我々はリリアムを占領することはしないし、ベータの生命まで奪う様なことはしない、基本的な生活・安全は保障してあげると譲歩してあげているんですよ、悪い条件ではないじゃないですか」
「ふざけないでください。事実上の占領じゃないですか。子供騙しのような条件が吞めるとでも思っているんですか!」
「そんなに、かっかしなさんな。もう少し冷静に考えてみたらどうですか?」
サーシャは机をバン、と叩いてアマンを睨みつけた後、腕組みをしているジーンの耳元にささやいた。
「これでは話になりません。一度ブレークしましょう。再検討が必要です」
「そうね。そうしましょう」とジーン。
「アマンさん。30分程、ブレークさせてもらえますか? 別室に行きます」
「どうぞ」アマンは即答した。
別室でジーンとサーシャは対応を検討した。サーシャが強硬案を提示し、ジーンは渋々了承した。 別室から戻り協議が再開する。サーシャの形相が冷酷に変わっている。
「アマンさん、本協議の行方に関してベータ側から条件を提示します」
「何かね?」
「もしこの停戦協議で合意が出来なかった場合、我々はアイリス他主力部隊をX国内に派遣し首都攻撃を始めます」
『‼』
X国、連合国側は驚いた。この戦争で初めて聞くベータの本格反撃宣言だった。さすがのキリーもこれは想定していなかった。キリーが慌てて追及する。
「サーシャさん、それは停戦条件じゃなくて、脅迫ですよね。反則じゃないですか?」
「あなた達の協議姿勢があまりにも酷いからです。これは単なる脅しではありません。本気ですからね」
「ちょっと落ち着いてください。まだ日にちはあります。合意を目指して協議を続けましょう」
―― 結局、この二日目の協議はほぼ平行線で進んだ。最初余裕があったアマン達も、午後は真剣なやりとりをしなければならなかった。
この日は全員、協議で疲れていたが、初日にできなかった夕食会を行う事になった。さすがに話に盛り上がることは無かったが、三日目以降も協議を続けることはできそうな感じであった。静かな夕食の中でジーンがある提案をした。サーシャだけには事前に相談済みだ。
「みなさん、明日ですが腹を割って本音を話すために、全員での協議の他に、個人協議を入れてはどうでしょうか? 2時間程度で」
「ほう、それは面白そうだな」アマンが言った。
翌3日目に、昼食をはさんで2時間ほど個別ミーティングをすることになった。その個別ミーティングの組み合わせは最終的に次のようになった。
アマンとサーシャ:政治的事項
キリーとアイリス:軍事的事項
アルファとジーン:技術・人権的事項
ただし、これで交渉に何か進展が見られるのか、それは全く不明であった。
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