第38話 美しい世界2
ジーンがアルファに頭をわずかの時間つけると、アルファの脳内で驚異の光景が投影された。見渡す限り、リリアムの様な未来的な都市と自然が広がっている。
空からの俯瞰視点で果てしない新世界が見渡せる。映像は公園にズームアップしベータの女性とアルファの男性の何十もの家族が仲良く談笑している。よく見るとその中の一人はスカイだ。幸せそうな顔をしている。
アルファは目頭が熱くなった。(美しい―― こんな世界があり得るのか?)
涙がこぼれ落ちるアルファの唇に何かが触れた。思わず目を開いた。ジーンだった。ジーンもまた涙を流していた。二人が思い描いていた世界は同じだった。
ジーンがそっと唇を離すと、アルファがその口をそっと開いた。
「美しい世界だな」
アルファが言った。ジーンが涙を拭いてから言う。
「もう、その世界は叶わない。叶わないけれど、それを美しいと言ってくれる人がいて良かった」
「ジーン。君の心が良く分かった。俺は、俺ができることを最後まで尽くす」
ジーンは口には出さないが、感じた。アルファは特別だ。ベータにとって特別な相手というだけではなく、自分にとっても特別な人だ。出会ったのは運命かもしれない。
ルファもベータのトップで人類で最も優秀な人間としか認識していなかったジーンが一人の女性だということを意識した。しかも自分と同じ世界を夢見ている人だ。
「アルファ、あなたとなら何かを変えられるかもしれない」
「俺もそう思う。君の夢の世界を見続けたい」
二人に新しい絆ができた。心が繋がった。お互いこんな気持ちは初めてだった。ジーンが時計を見てから言った。
「時間です。会議室に行きましょう」
「ああ、分かった」
部屋を出て通路を歩いている時にジーンが言った。
「まだ詳しくは言えませんが、スカイはその内、私達がある遠い所に案内します。幸せな場所です」
アルファはジーンが言う『幸せな場所』とはどこなのか、問いただそうとしたが止めた。どこであろうとスカイがほぼ孤独であることは変わらないからだ。
もう自分のスカイを守る役目は終わっている。その場所に行くかどうかは彼自身が自分で判断すべきだし、そうするだろう。何より彼女の言う事は信用に値することが今回わかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます