第34話 Greeting 2

 アマンがサーシャ以下ベータ側に言った。

「こちらのメンバーは知ってるな? キリーとアルファだ」


 キリーが自己紹介する。

「補佐官をしているキリーです。ジーンさんとは初めてですね。お手柔らかに」

「こちらこそ。キリーさん」


 次にアルファ。

「私は連合軍のアルファです。キリーと同期で、三年前のマヤ空港事件の時にサーシャさんとアイリスさんとは一度会ったことがありますね。もっともアイリスさんとは何度も前線でやり合っていますが」


 すると、そのアイリスが日頃の恨みを込めて言う。


「アルファさんのベータの扱いにはたいへん感謝しております。でも、そもそも攻撃をしてくるのを止めていただけませんかね? 非常に迷惑です」


 するとキリーがたしなめた。


「そのための交渉に来たんだ。アイリス」


 アイリスはマヤ空港でキリーと話して、彼の行動の背景を聞いた。彼が単純な野心家ではないことを知った。キリーは彼女と同郷のルーツを持つことから特別な意識がある。


「ごめんなさい。今回は期待している。もう何年も続いているこんな争いは止めたいの」


「……」

 キリーは自分には素直なアイリスに、彼にしては珍しく答えが詰まった。


 アイリスの眼の色はベータのそれだが、そのオシミア人の血を継ぐまなざしはキリーの家族を想起させる。キリーは視線を外して黙ってしまった。


 その様子を見たサーシャが代わりに空気が固まらないように言葉を繋げた。

「アイリス。みんな理解しているわよ。さあ、みなさん、そろそろ中へどうぞ」


 停戦交渉のスケジュールは次の通り。


 1日目 午前中、リリアム見学、午後、停戦条件提示、説明

 2日目、第一回協議

 3日目、第二回協議

 4日目、第三回協議

 5日目、予備



―― リリアム見学


 一休みした後、アマンら3人はサーシャのガイドでドーム内を案内された。キリーは観察の必要があると思われる場所に、超小型の盗聴センサーを捲いていく。


 センサーは砂粒程の大きさで透明であり、壁などに接着する。約一ヶ月間映像と音声を送信し続ける。サーシャとアマンが都度会話を交わす。


「こちらが居住区です。マンション形式ですね」

「結構広いな。一人で住めるのか?」

「もちろん。既に5万人分は確保されており、最終的には20万人まで増やす予定です」


 次にインフラ設備を映像で見る。


「こちらが水道設備、そしてこれが送配電設備です。小型の原子力発電所が2か所、ローカルの太陽光発電がほぼすべての建物に設置されています」


「原発なんて必要なのか?」


「小型原発ですよ。さすがに太陽光だけではまかなえませんから」


 そして官邸の内部を案内する。


「会議室、執務室は見ていただきましが、コントロールルームはお見せできません。最後にジーンが彼女の研究室を見せても良いとのことで、特別にお見せします。外部にお見せするのはこれが初めてです」

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