第33話 リリアムでの停戦交渉
―― 4月6日 リリアム
参加メンバーはX国からアマン首相、キリー首席補佐官。さらに連合軍側からアルファ司令官も加わっている。彼らが乗った黒いリムジンはリリアムの中を進んだ。
「ふん、これがリリアムの中か。なかなか立派じゃないか」
アマンは予想外に洗練された未知の惑星の基地のようなリリアムの景観に少し嫉妬を覚えた。
アルファとキリーも初めてのリリアム内部に興味津々だ。ドーム内はSF作品に出てくる未来都市のような
「こりゃ凄い。さながら未来都市だな」
「ああキリー。さすがベータが作るドーム都市は一味違う」
「しかも、女性ばかりだ、当たり前だが。これだけ多いと多少怖い感じもしないか?」
「全員ベータだ。怒らせると怖いさ」
「ここでは少し大人しくしておくか」
「それが賢明だ」
彼らを乗せた車はリリアム中央にある、ジーンらの官邸に到着した。リムジンからアマン、キリー、アルファが降りる。
X国の政治家や連合軍のメンバーがリリアムに入るのは初めてであった。入国(あえて国と記載する)に際しては徹底的な身体検査と持ち物のチェックが行われた。
しかしキリーは検査で検知できないような極小のセンサーを多数持ち込むことに成功していた。最新型のスパイデバイスだ。
官邸前でジーンとサーシャ、そしてアイリスが彼らを出迎えた。しかし握手はしない。
ジーンが言った。
「アマン首相、それからみなさん。遠いところからよくいらっしゃいました」
アマンが答えた。
「ジーンさん、こちらこそリリアムでの開催に同意していただけましてありがとうございます。初めて見ましたが、素晴らしいドームですね」
「どういたしまして。ありがとうございます」
そのやりとりを聞いていたアイリスがアマンを軽く睨む。
(壊しがいがある、と言いたそうね?)
ジーンがサーシャとアイリスを紹介する。
「中で改めてあいさつさせていただきますが、こちらがサーシャとアイリスになります」
「サーシャさんは初めてかな。アイリスさんには散々お世話になっていますね」
アマンは皮肉を込めて言う。X国軍は彼女一人に痛い目に遭わされ続けている。
アイリスも負けてはいない。
「アイリスです。アマンさん、お会いするのは初めてですね。あなたが存命中にお会いできるとは思っていませんでした。あの世であなたに殺された私達のベータの仲間から袋叩きに遭っているものと思っていました」
「ほう、これは手厳しいな」
サーシャがなだめる。
「アイリス、それくらいで。今回は停戦交渉に来られたんだから」
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