第15話 アルファとスカイ(双子)

 西暦2035年、ベータの居住施設への爆破事件が起きる5年前。

 ある地方都市に双子の男の子が産まれた。

 男性としては極めて珍しいタイプだった。


 一人は男の子にも関わらず白い肌と白髪はくはつ、薄青の眼を持つベータアルビノで、その透き通るような美しい眼からスカイと名付けられた。


 もう一人は典型的な旧人種で体格の良い子だった。アルファと名付けられた。ちなみに当時は現代人(ホモ・サピエンス)=アルファという概念は無く、偶然付けられた名前でもあった。


 弟のスカイから紹介する。スカイはベータの女の子と同じように白髪で知能が高く超能力も使えた。しかしその特徴が故にベータの女の子同様、周りからしいたげられるようになる。


 男子の中では極めて珍らしいベータアルビノであり一般人からは当然のように敬遠される。それで済まなかったのはベータの女性からも受けた視線である。


 ベータという種の集団(女性陣)から見れば、同じ種ではあるが、唯一彼だけが男性だった。想像してみて欲しい。女性だけの1000人の会社にたった一人だけ男がいる状況を。その男は孤独になる。


 ベータアルビノの男、スカイはどのグループにも属さない、孤独な存在だった。スカイは自分にいつも問うた。


「俺は、一体何者なんだ?」 


 唯一、双子の兄のアルファだけが彼をいたわり守った。しかし、それでもやはりスカイは孤独な存在であり続けた。


◇ ◇ ◇


 一方、兄のアルファは黒髪に長身、体格がよく、スカイ同様知能も優れていた。さらに彼が一般人と違うのは、誰にも知られていないが特殊な防御能力を身に着けていたことだった。


 アルファは連合軍の兵士に推薦され、その優秀さから異例の出世がなされた。ベータの増加により世界は不安定になりつつあり、彼はその対処に必要な存在とみなされた。


 アルファは自分で望んではいなかったが、若くして最前線で活動を行う機動部隊のトップとなった。彼は危惧していた。


「いずれ連合軍はベータと衝突せざるを得なくなるだろう。気が進まん」


 スカイとアルファは外観は対称的だが、結束の強い双子の兄弟であった。スカイは兄に訊いた。


「ベータへの本格的な攻撃命令が出たら、兄貴はどうするつもりだ?」 


 質問されたアルファはスカイの白い髪と薄青の眼をじっと見た。

 ベータの女性そっくりだ。

 ベータに攻撃をするということはスカイを攻撃することに等しい。


「わからない。ただ役目は果たさなければならない」


 アルファ個人にとってベータは敵ではない。もちろんスカイもだ。しかし、アルファは立場上ベータを守ことは許されない。天蓋孤独なスカイを守ることもできないかもしれない。いつか選択を迫られる日が来るだろう。


「スカイ、全面戦争になったらお前はどうするんだ?」 

「消えるさ、どちらにも所属しない俺に居場所はない」


 アルファにはスカイにアドバイスできる事は何も無かった。スカイの気持ちは彼が一番良く分かっている。アルファはただ一言だけ言った。


「ぎりぎりまで消えるな。俺のそばにいればいい」

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