第16話 2040年代の状況とジーンの成長
最初のベータが誕生してから十五年、2040年に発生したベータの居住施設の爆破事件の後も、ベータは増え続けていた。
ベータの少女達の隔離政策は世界中で続いていたが、出生率があまりにも高くなり、状況は混乱の一途を辿っていた。そしてジーンの成長で形勢が変わっていく。
――どうして私達が施設に行かなければいけないの?
――髪が白いから? 念力を使うから?
――なぜ、私達は家族と一緒にいてはいけないの?
――私達、誰にも迷惑はかけてないよ。どうして!
ベータの子供達は口々に叫ぶが答えは帰ってこない。
ベータ収容施設の担当者は諭す。
「君達は選ばれた優秀な種なんだ。だからみんなと一緒にはいられないんだよ……」
――優秀だから隔離する? 何それ、理由になっていない。
21世紀になったと言うのに露骨な人種差別が再び始まってしまった。
やがて、ベータと対比するために従来人種をアルファと呼ぶようになった。
アルファとベータが対立するケースは各地で増え続けた。
ベータはアルファから一方的に攻撃さるばかりではなく、徐々に強い抵抗を示すようになった。その要因の一つはジーンである。
( )内は犠牲者数
2040年 施設爆破事件(ベータ30名)
2044年 集団襲撃事件(ベータ10名、アルファ5名)
2047年 連続殺人事件(ベータ24名、アルファ3名)
2049年 ロスでの軍事衝突(ベータ15名、アルファ300名)
一方、ジーンは十代として過ごしたこの期間に凄まじい成長を遂げる。
45年頃には弱冠十五歳にして、すでにベータの主要人物としてベータの女性達の組織化を開始する。そして医学・生物学などあらゆる科学分野で最先端の知識を自ら獲得していく、それはベータの自立に大いに貢献することになる。
2048年。ジーンは彼女の一番弟子で五歳年下のサーシャを右腕として、巨大なベータ専用の居住区の建設を決めた。
ドーム状の巨大建築物で、2年かけて建設する。
ジーンが建設を指揮するその巨大ドームは後に『リリアム』と呼ばれる。
建設地はアフリカ南部に決めた。
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