第10話 2035年 3人のベータの子 

 最初の症例から十年が経過した。

 同様の症例は世界で千例を超えた。

 研究者は彼女達の遺伝子の一部に同じ変異があることを突き止めた。

 それはと呼ばれた。


 彼女達はアルビノで言語障害があり短命ではあったが、知能が極めて高く容姿も美形であるという特徴があった。

 最大の問題である短命を克服すべく、医師の研究と懸命な治療が行われた。

 その甲斐もあって、ベータ変異を持つ女子の寿命は伸びてきた。


 しかし、会話が上手くできずコミュニケーションに問題がありながら、頭脳が飛び抜けて優秀なベータ変異を持つ女の子達に、最初は同情的だった人々の見る目が変わってきた。

 注目され、ちやほやされる。学業で優位に立つ。


 やがて彼女達は優秀な人達の仕事を奪う存在としても認識されるようになる。

 さらに彼女達は念力のような変な力を持っている。薄気味悪がられた。


 ◇ ◇ ◇


 ある時、小学生の白髪のベータの女の子三人が夜の街角で立っていた。

 警察官が不審に思って声を掛けようとしたたが、その白髪はくはつを見て一瞬、躊躇した。

(うっ、この子らベータか。最近問題になっている……)


 警官もベータアルビノの子の取り扱いには注意を払っている。

 小学生と言っても知能は大人と変わらない。

 そして念力など特殊な能力を持っていることを知っているからである。

 それでも恐る恐る声をかける。


「君達、こんな夜に何をしているんだ?」


 女の子達は警官を見つめるが、何も答えない。

(そうだ、この子らはあまり話が出来ないんだっけ? でも聴覚は確かある筈だ)


「何か困っているのか?」

 警官はYes/Noの質問に切り替えた。

 しかし、三人は首すら動かさない。


「こちらの質問の意味はわかっているんだよね? こんな夜中、最近不良共が良く出るから危ないぞ」


 少し警官がいらだって言うと、一人の少女がうなずいた。

 そしてカタコトの言葉で言った。


「ワタシタチ、イバショナイ」

「居場所が無いだって?」


 詳しく聞くとこう言う事だった。

 外見や言葉の問題で学校で孤立し、日常的にクラスメートからいじめを受けている。

 自宅でも、家族から敬遠されるようになってきた。

 家族の中で一番優秀で特殊な人間であるからだ。

 扱いきれないし、放っておいても一人で何でもできるので問題無い。


「ダイジョウブ、モウスコシデウチニカエル」


 彼女達は、最大限家にいる時間を減らしているだけで、家には帰るから大丈夫だと言って、去って行った。

 しかし、この後事件が起きる。


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 ※注意: 第11話は残虐行為の描写があるので、読みたくない方は飛ばしてください。

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