第3話  マーキュリー博士 島に上陸

 それから二十時間後、マーキュリーは三人のチームで南洋の孤島メレオン島に上陸した。メレオン島は最近、旧人類を発見したと言う噂が流れている島である。人類学者のマーキュリーとしては放置しておくわけにはいかない。


 同行メンバーの二人を紹介する。


 一人は背が高めのモデルのような女性リズ。

 リズはF1というもう一つの新人種だ。

 頭が小さく、背中の骨格が少し異なっている。

 人造翼を背中につけ飛び回ることができる。


 もう一人はTJティージェイ

 彼はベータの男性である。

(F1に男性はいない)


 TJら男に特殊な能力は無いが、彼は知能が優れている。


 このチームでTJは情報処理、制御、後方支援を行っている。他のほとんどのベータの男性同様、優しくおとなしいタイプだ。

 

 彼が言う。

「マーキュリー博士、カプセル準備できました。私はここで待機しています。有線中継器をカルデラ内部に垂らしておきますので、通信も大丈夫なはずです。ドローンで映像監視しますが何かあったら連絡ください」


「ありがとうTJ。じゃあ行ってくるわ。リズ、カプセルに入ろう」

 マーキュリーとリズはカプセルでカルデラ内部に移動した。

 

「うわ、何ここ? 天国?」


 二人はカプセルから出て唖然とした。

 美しい木々と花、鳥がさえずり、小川が流れ、上空にはオーロラのような薄い色彩のある雲が流れ……


「博士、ここは楽園ですね。まさかカルデラ内部にこんな世界があるなんて……」


 リズがそのすらりとした体をさらに伸ばして辺りを見回す。


 一方、マーキュリーは学者の視点で環境を細かく観察した。


「これ、かなり人工的に整えているわね」


「え? 自然じゃないんですか?」

 リズが驚く。


「かなり精巧だけど、誰かが丁寧に造り込んだものよ。すごい技術だわ」


 その時、リズが人影を見つけた。

「博士、あそこ、子供ですかね?」


 美しい森の奥で、子供らしき人影が2つ動いていた。

「気を付けて近づいてみましょう」


 その子達もマーキュリー達に気が付いた。

 特に逃げる様子は無い。

 逆にこちらに興味があるようでじっと見つめている。


 近づくと、十歳に満たないであろう男の子と女の子が、珍しい物を見るかのような目つきでマーキュリーとリズを見続けている。


 マーキュリーはTJに連絡する。

「人間二人発見。子供よ。接触する」


 TJの声が返って来る。


「OK、画像で見えるよ。子供でも一応気を付けて。近くに母熊がいるかも」


「了解。私も母熊だから大丈夫」


 マーキュリーはすぐにこの子供達の普通ではない特徴に気が付いた。


(この子らは私達と違う)

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