何を話そうか
そこにはいたのだ。
逆さ吊りでこちらを見つめる、少年の化け物が。
…しかもダブルピースで。
「………あの」
目の前の少年が、「どうした?」と言いたげに首を傾げた。
「ふざけてる?」
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「いえ、至って真面目です。」
…びっくりした、この子喋れるんだ。
目の前の少年は「よいしょ」と言いながら、逆さ吊りの状態を私と同じ向きにした。
…どうしよう、この状況。
逃げるか、このまま会話するか。
「僕のことわかる?」
あっちから話が来た。
「え?有名な化け物なの?」
「なんだよ化け物って!
僕は幽霊だ!…それと有名では
ない!」
「ごめん、知らない幽霊かも」
幽霊と名乗る少年は、少し寂しそうな表情を浮かべた。
「…そっか、わかった。
じゃあ、気を付けて帰って。」
…気の使える幽霊なんだな。
私は指示に従い、家への帰路を辿った。
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「ただいまー」
疲れた足を玄関にあげ、手に持っていた荷物を自室に投げ捨てた。
そして私は、あの部屋へと向かう。
向かう途中で、少し思考を巡らせた。
そういえばさっきの幽霊、髪に猫のヘアピンみたいなのつけてたな。
なんか見覚えあると思ってたけど、いつも貴方の側にあったんだった、猫のピン。
部屋についた。
そこには、貴方がいる。私の一番大切な人。
でも、不思議だね。
私の目に写る貴方の顔は、いつも黒く塗りつぶされている。
顔が見えずとも、名前を思い出せずとも、私は貴方がひたすら大切で。
ただ、大切だということだけを覚えている。
今日は、何を話そうか。
私は、貴方の写真と猫のピンが置いてある床に、ゆっくりと腰かけた。
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