失念と幽霊

雨音

化け物の足音

 廊下に茜色の日が差す放課後、窓の向こうでは日が暮れ始めている。

その光景を見て私はふと「綺麗」と呟いてしまった。

すると後ろから、「おーい」という声が聞こえてくる。


 まずい。さっきの独り言が誰かに聞かれていたのか。

私は長い廊下を、玄関をめがけ早歩きを始める。


 後ろの誰かも、私に並行して近づいてくる気配がした。

雑音のない廊下で、私と誰かの足音だけが鳴り響く。


 後ろの足音が私の真後ろまで近づいてきた。

諦めて後ろを振り向く。するとそこには、



 誰もいない長い廊下があった。



 「え、う、嘘…でしょ?」

困惑する頭を背に、正面に視点を戻す。



正面を向いて、私はひどく後悔した。

そこにはいたのだ。





紛れもない化け物が。

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