ハニーメープル

また目が覚めた。

もう朝のようだ。


ギューギューギューと小鳥のものと思われる鳴き声が聞こえる。

まだ夢心地な部分があったけれど、改めてここは地球じゃないと認識した。


異世界といっても、朝の空気は美味しい。


ふぁ〜っとあくびをすると、肺が冷たい、新鮮な空気で満たされるのが分かった。


隣には私に寄り添うようにして寝るマリアナがいた。


あの不気味で不思議な体験は何だったのだろう。


見た感じ、特に異変など無い。

伸びをしようとして立ち上がると、昨日と比べ、すこし身体が軽くなった気がした。



ー・ー・ー



「おはよう!ハニーメープルちゃん!」


ハニーメープル?誰の事だろう?それよりすごい名前だ。

とても甘そうだ。


「あなたの名前はハニーメープル、私がつけたのよ。」


腰に手を当て、胸を反らせたミアが私の顔を覗きこんだ。

私の名前!?


「どう?気に入った?」


昨日ミアは頑張って私の名前を考えてくれたんだろう。


人間ならキラキラネームと言われるだろうが、馬の名前にしては悪くない。自分がウマだと思い出すと、納得した。


ミアがさらに近づいて、つぶらな瞳で見つめてくるので、

つい笑ってしまった。


「ヒーヒー!」


自分の出した声に驚いてしまった。


「よろこんでくれたのね!うれしい!」


勢いよく抱きつかれて、押し倒されるかと思ったが、ミアは手加減してかキュッとハグをするだけだった。



「メープルちゃん、喜んでくれたか。」

パパもやってきた。


「うん!鳴いてくれたよ!」


ミアはご満悦だ。守りたい、この笑顔。



「じゃあメープル。明後日は健康診断だ。お前のスキルが分かるぞ。」


スキル?この世界にもあるのか!

じゃあ魔力も?


「マリアナは魔力持ちだからきっとメープルもだろう。

だが、問題はスキルだな。」


うぉぉぉー魔力!カッケー!って懐かしいー。


だが、魔力と言われても右脚は疼かないし、特に変わった感覚もない。それに、今まで魔法らしい魔法を見たことがない。


「ミアもまほう、使えるんだよ。」


すると、ちょろちょろと手から水が出てきた。


おおぉぉ〜凄い!私も!って、脚だしな。


「私のスキルは水を作れるの。パパもだよ。」


パパはちょうど桶に水を注いでいるところだった。 


「パパ買い物に行ってくるからな、ミア良い子でまってるんだぞ。」


「はーい。」


短い腕をめいいっぱい伸ばして振る姿は癒しだ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る