マリアナ

ミアたちが見えなくなるのを確認して、顔をあげた。


ところで、さっきからずっと草食べる母馬は産後だからかお腹がポテッとしているが、なかなかにイカつい。


どうせ暇だし、母の馬体を観察してみることにした。


まずは頭、ウマだけに馬面だが、2本のツノがある。真っ直ぐで表面はツルツルに磨かれている。刺されたらひとたまりもない。


胴体、背中からお腹までごつごつした黒い皮膚で覆われている。

近くで見るとまるで岩のようだ。


最後は尻尾。

下に垂れていて、先っちょは毛の代わりにこぶし大ほどの一段と硬そうな皮膚が覆っていて、アンキロサウルス?みたいだ。


総じて、わかった事。それは…


ーこいつを怒らせてはならない!ー


体当たりでもされたら、打撲傷では済まないだろう。もう、「全身を強く打って」の状態だ。

無駄なちょっかいはよしておこう。


ずっと立っていたので、脚が疲れてきた。

目も半分閉じかかってきた。

もう寝よう。


ー・ー・ー・ー



ふと目が覚めると辺りが真っ暗だった。


また意識だけになったかとも思ったが、足元には藁の感触があるからそうでもないらしい。


目が慣れてくるとそばで飼い葉桶に顔を突っ込んだまま寝るマリアナが見えた。


(何だあれは…)

マリアナの胸のあたりからスゥーっと白い光が出てきた。


(人魂?いや馬魂?)

そいつはますぐこちらに向かってくる。


(何あれ何あれ…どういう事…)

全く意味が分からない。逃げようにも金縛りみたいになっているみたいで、脚一本動かせない。


じわじわと距離が縮まる。

(あっ、あぁっ…)


すると白い光は吸い込まれるように私の胸に入った。

(えっ、ええぇっ!?)


何も違和感がないが、いったい何だったんだあの光は。


体は動かせるようになったが、戸惑いと恐怖で全身から力が抜ける。


ただ震える私に気付いたのかマリアナが目を覚まし、私の体をなめ始めた。


安心しなさい、大丈夫よ。とでも言っているのだろうか。

体は安心したのか、震えが止まり、また眠りについた。


ー・ー・ー・ー

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