いるやつ 2本立て
いるやつ ※短いので2本立てにしました。
【いるやつ その1】
「見えてきたよ」
車の助手席からよく見える平屋は、最近までお婆ちゃんが住んでいたお家。車道に面した部屋の障子には大きな穴が沢山開いていた。
「部屋の中丸見え……。結局最後まであのままだったなー」
運転席のパパが笑うと、後部座席のママも苦笑いした。
ずっと一人暮らしをしていたお婆ちゃんと一緒に住むことになった。今日ここに来たのは、ここを掃除して貸家にする為なんだって。
三人で協力して家の中を綺麗にして、ボロボロの障子を張り替えた。
「そういえば、俺が子供の時からこの部屋の障子はこんな感じだったなー」
張り替えた障子を元の場所に戻しながらパパが呟いた。
「ずっと穴だらけだったってこと? 何で誰も直さなかったの?」
「んー。そこにいる奴に覗かれるのが嫌だからとか、何とか言ってた気がするなー」
「穴が開いてるから覗かれるんじゃなくて?」
ようやく障子をはめ直せた。作業中は外から丸見えだったから居心地が悪かったけど、これで安心。
「やっぱり、破いておいた方がいいのかも」
ママがおかしなことを言い出した。顔を見れば引き攣っている。
指を差すので障子に向き直ると、私の顔も引き攣った。
いつの間に現れたのか、大量の目が障子のマス目を全部埋め尽くして瞬きをしていた。
「障子はやめてカーテンにしようか」
パパは呑気に笑っていた。
【いるやつ その2】
授業中、隣の席の奴が下手な落書きをしているのに気付いた。人なのか動物なのかよくわからないけど、とにかく二足歩行の生き物だということはわかった。絵の中のそいつは大笑いするように、大きな口を開けてギザギザの歯を見せびらかしている。
へったくそな絵なのに、なぜか俺を不安にさせた。この絵の怪物の正体が気になってしょうがない。この絵には、そういう力があった。もしかしてこいつ、絵の才能あるのか?
「それなに?」
授業が終わってから質問をぶつけてみると、そいつは困ったように眉を下げた。
「窓にいるやつ」
視線を向ける。窓の外で、絵の中の怪物と瓜二つの怪物がギザギザした歯を剥き出しにしていた。
「めっちゃ似てんじゃん。絵、
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