お姉さんの怪談 全2話

お姉さんの怪談 1/2

 夏休みのある日、部活の先輩がこんな事を言い出した。


「合宿で肝試しやるから。一人最低一つは怖い話用意しといて。ちなみに、有名じゃないやつね」


 みんなは悩んでいたけど、私には一つ心当たりがあった。


 それは、小学校の頃に流行った怖い話。私の家とは反対方向の通学路にある、歩道に飛び出した榎の枝に纏わる怪談だった。


 でも、その話を聞いたのは小学校の頃だったからすっかり内容を忘れてしまった。


 何か思い出せるかと思って、夕方その榎の枝の場所に行ってみることにした。


 実際に見れば、道路の脇から生えた榎の枝が飛び出して屋根のように道を覆っているだけだった。背が高い人は枝に頭が引っ掛かるかもしれないけど、その他は何でもない普通の枝だった。


 はっきり言って、地味過ぎる。何も怖くない。


「あの」

 不意に声が聞こえて振り向いた。いつの間にか、小学生くらいの女の子が後ろに立っていた。


 女の子は人懐っこい笑みを浮かべて、

「その枝が気になりますか?」

 と、聞いてきた。


(もしかしたら、この子はこの枝に纏わる怪談を知っているかもしれない)

 そう思った私は、思い切って女の子に訳を話してみることにした。


「この榎の枝の怪談ですか?」

 女の子はちらりと枝を見上げると、また人懐っこい笑みを浮かべて頷いた。


「もちろん知ってますよ。お姉さんがわたしに教えてくれましたから」


 そう前置きして、女の子は話し始めた。

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