第7話 悪役令嬢は対面する

さて。

さっそく攻略対象との対面だ。


情報ギルド長、デュラン。

元々スラム街出身で家族は妹が一人。

親に捨てられて二人で身を寄せて生活していたところ、数年前に前情報ギルド長の目に留まり今に至る。

たしか年齢は現在23歳。


…若いわ。

日本では大学を出てやっと社会人になったばかりのひよっこじゃないの。


そして気づく。

ああ、転生前の私の年と一緒ね。


乙女ゲームの宿命か、攻略対象者はどんな立場の者であれ若い。

当然だ。

高校生になったばかりの少女と恋に落ちることを考えると、あまりにも年齢が上の相手では犯罪臭がしてしまうから。


だから攻略対象は揃いも揃って10代後半から20代中頃まで。

デュランはその中では年齢が上の方だった。


ヒロインはひょんなことからデュランと出会い、彼の傷に寄り添ってその心を救うわけだが…。


デュランの心の最大の傷は、彼が情報ギルド長になってしばらくしてから起こった誘拐事件で妹を亡くしたことだ。


時系列で言えばちょうど今頃。

そう、学園への入学の3ヶ月前だ。


おそらく今はデュランの妹が何者かに攫われて三日くらいだろうか。

何でもない顔をして仕事をこなしながら、彼は今必死なって妹の行方を探しているに違いない。


そして当たり前だが私はその誘拐先を知っている。


チートだよね。

でも今回に限ってはその情報を利用させてもらう。


私もこれからの未来がかかっているんだから。


情報を教えることでデュランに恩を売る。

そしてその恩を元に、今後の情報を手に入れるための方法と、何と言っても今後の生活のための収入源を作るのだ。


私は気合を入れてデュランが待つ部屋の扉を開けた。


あ。

こっちの扉はマスターが開けてくれたよ。

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