第5話 悪役令嬢は裏通りを行く
貴族令嬢は基本的に一人では行動しない。
ましてや公爵令嬢ともなると、侍女や護衛無しに街中に出るなどもっての外だ。
しかし今回ばかりはメアリについて来てもらうと困る。
ある意味、自身の護衛がお金次第の人間で助かったかも。
そう思いながら私は馬車を降りて町の裏通りを護衛と共に歩いていた。
メアリを何とか言いくるめて、今現在私は護衛と二人だ。
エレナの護衛は実は隠し攻略対象だった。
黒髪黒眼はまさしく日本人向けの容姿であり、そして攻略対象であるからには当然その顔も整っている。
しかしその攻略ルートは他の対象者を攻略しなければ解放されない。
なので今は安全ではあるのだが…。
人生は一度きりなのに、他の攻略対象を攻略した後にしかルートが解放されないなら、護衛とのルートは無いようなものじゃない?
と思うのだ。
ゲームだからこそ成り立つシステムよね。
護衛のダグラスは例にもれずつらい過去を持っている。
そのため全てはお金次第という考え方だ。
そしてなぜ公爵令嬢の護衛などできるのかというと、ただ単純に護衛能力が高いからだった。
エレナの両親はエレナの身体的安全には万全の対策を講じている。
あくまで身体的には、だけど。
そりゃあそうよね。
将来の王太子妃なわけだし。
エレナに何かあって王太子妃から外されたら両親は憤るに違いない。
その怒りの矛先はエレナに向かうのだが。
理不尽だわぁ。
エレナは両親の望む娘の役割をちゃんとこなしているのに。
それでも、この先王太子に婚約破棄されたら両親はエレナを捨てる。
自身には何の力もない、一人の少女を。
そろいもそろって人としてクズね。
そう心の中でぼやきながら進むと、目的の店がほどなくして見えてきた。
表向きはただのカフェだが裏では情報を扱っている情報ギルドの店が。
私は何食わぬ顔をしてその店の扉を開いた。
あ。
開いたのはダグラスだけど。
貴族令嬢は自分で扉を開くこともしないもんね。
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