第45話 イグドラシル
再びアリスを連れて会議室に来ていた。
「信じられないわね…なんなの、その能力は!」
驚愕しているのはマックスだけじゃなく他のメンバーもポカーンとアリスの力を凝視している。
恥ずかしいタイツから、やっと解放され迷彩服を着れるようになった。
アリスは本人の希望で向こうの服と同じ物をソフィアに作ってもらっていた。
体が違うとはいえ向こうのアリスと区別がつかない。
そして空中にアリスがフワフワと浮きながらサイの導力によってグラスと中身の水も宙に浮いていた。
「特に問題なくサイも使えるし身体能力も問題無いみたいね、違和感も全く感じないわ、むしろ調子がいい…」
身体の調子を確かめるように、高速で腕や脚で素振りをするアリス。
「信じられないのは、こっちよ一瞬で服が作れるしドアも勝手に開くし見たこともない灯り…タカヤの話だと空飛ぶ乗り物や人を運ぶ箱もあると聞いたわ」
「それに、キースだけじゃなくマックスやエドワード王がヒューマンとして居るなんて…」
「アリシアをモデルにしたホムンクルスか…俺は気に入らねーな」
仏頂面でアリスを睨みつけるエドワード。
「気持ちは分かるけど…タカヤやアリスの前で言うもんじゃないよ、エドワードだってダイブ装置の開発を手伝ってくれたじゃないか」
一応、キースは気を利かせることが言えるのか。
「あれは仕方なくだ、ホムンクルスを造る為なら断った」
「お父様!アリス様は悪い人じゃない!私のことで根に持つのは分かりますが……アリス様に当たるのは違います」
ソフィアのホログラムが現れアリスを庇う。
「ソフィア!?」
驚くアリスがソフィアに触れようとするがすり抜けてしまう。
「こっちのソフィアは…なんて言えばいいのか…幽霊みたいなものなんだイチから説明すると……」
………………
「タカヤが人工精神体??私の世界が悪霊の心??私がフェンリルの元凶をコントロール?理解が追いつかないわ」
そりゃそうだ…俺だって現実感が無い。
「アリシアの転生体とはいえ、精神はアカシック・レコードの管理者になれるはずだ」
黙っていたホクサイが口を開く。
「アリスと数名の少数潜入ミッションでアカシック・レコードのあるタワー、イグドラシルに行き管理者権限を奪うのが最もミッション成功率が高い」
「私がアカシック・レコードってのをコントロールしたら向こうのフェンリルが消えるのね!わかった」
「じゃあ俺も行かないとな、悪霊が潜入したルートなら覚えてる」
アリスが行くなら俺も行くしかない!!
「戦闘能力の高いタカヤには元々行ってもらうつもりだ、あとは…マックスこの三人で潜入することになる」
「神藤貴也が潜入したルートは警戒されてる可能性があるわね…私がタカヤを護ってあげないと♡」
「私も居ますわ!」
結局、俺、アリス、マックス、ソフィア……エデンで旅した時のメンバーだな。
「僕もいいかな?」
「キース…でもお前、非戦闘員だって…」
「僕はアリシアの転生体…アリスに興味が湧いてね」
なぬ!!?
「アリス…僕は君の事をもっと知りたいんだ…」
アリスの手を握りしめ、正面から見つめるキース…
「ちょっと!なに!」
困惑するアリス…
「てめー!ふざけんな!アリスは俺のもんだ!!」
「君の力は特殊だ、もしかしたら…その力を応用できれば新たな新人類を…」
「とくに話に聞く治癒…再生を加速する能力を発展させたら地球の再生に役立つかもしれない、生でその能力を見たいね」
あ……そっち…
「キース…残念だけどアリスのサイはもう使用禁止だ!とくに治癒は燃費が悪い」
「なぜだい?彼女の力があれば…」
「アリスの紋章は薄いだろ…サイはアリスの命を削る…」
アカシック・レコードなら…もしかしたらアリスの寿命をなんとかできるかもしれない。
「キースはソフィアを通してモニタリングして頂戴、あなたのハッキング能力は必要よ♡それにしても……」
「アリスは俺のもんだ!!なんて妬けちゃうわね♡」
勘弁してくれよ……
「向こうのマックスとは随分印象が違うわね」
呆れたように耳打ちしてくるアリス…
俺もそう思うよ……悪霊の心象が向こうの人格に影響与えてるらしいけど……どうしてこうなった…
……………………
『もうすぐでイグドラシルだよ』
キースから通信が入る。
「意外と近いな」
俺を救出した装甲車に
俺、アリス、マックス、ソフィアが搭乗して目的地のイグドラシルまで向かっていた。
『いくらレーダーやPsyの探知にかからないからと言っても、目視で発見されたら総攻撃を食らうよ、監視ドローンをどうやって突破するんだい?』
「アタシもそう思うわ…何か策があるんでしょうね?」
いつもは悪霊がリーダーとなり知恵を働かせていたのか、マックスから期待の眼を向けられる。
「策?そんなもんねーよ!強行突破だ!!」
「なんですって!?」
「監視ドローンに目視されない距離…そこから俺が狙撃して撃ち落とす!!」
「こっちの居場所はバレてないんだろ?警戒されるかもしれないけど混乱に乗じて神藤貴也が潜入したルートから一気に最上階のアカシック・レコードに到達だ!」
「そんな!ムチャクチャよ!!監視ドローンが視認できない距離は2kmはあるわ!こっちの旧式狙撃銃ウィンチェスターM70の狙撃範囲を……いえ…あなたなら…」
ああ…何とかなる!やったことないけど、イメージが掴めるというか出来る!
『潜入した後はどうするんだい?どんな罠や敵兵が居るか分からないんだよ?』
「だから!強行突破だよ!こっちの世界とエデンは違うかもしれないけど俺達4人のパーティーは最強だったんだ!何とかなる!」
「ほんと…考え無しというか…貴也とは全然違うわね……でも♡面白そうじゃない!なんの根拠もないけど妙な説得力があるわ♡」
「戦闘なら任せて!その銃って武器は凄いけど私は使えないし…剣があれば私も戦えるわ!」
アリスの武器か……そんなもの…
「私、アリス様の記憶にある武器なら!簡単な構造ですし、この車両にある金属加工装置で製作可能ですわ」
それなら!アリスの獣族としての身体能力は、こっちの世界じゃ化け物だ!
「決まりだな!マックス!スナイパーライフルをくれ!」
マックスが投げて寄越したライフルに慣れた手つきで弾を込めていく。
『一分後に敵の視界範囲に入るよ!一度車両を停めて…』
「必要ない!このまま上のハッチから乗り出して撃つ!」
ハッチを開けてスナイパーライフルを固定する。
あっつ!!!外はマジでサウナじゃねーか!
感じろ……風、重力、慣性、湿度、温度から……
スナイパーライフルのスコープから小さな的を狙い……
パーーーーン!!!
「ヒットだ!!マックス!次々いくぞ!!全開でイグドラシルまで駆けろ!ソフィア!潜入ルートを車両に送れ!」
パーーーーン!!!
パーーーーン!!!
パーーーーン!!!
「とんでもない射撃センスね!タカヤ!高速で動く車両から全弾命中なんて!」
群れになって飛び出してくる迎撃ドローンが見えるが、明後日の方向を飛び回り混乱している様が見える。
「今だ!!あの通気口に飛び込め!」
「クラスターエンジン全開よ!ブースト圧最大!!壊れてもいいわ!!」
とんでもない加速Gがかかり!タワーの下層部にある通気口に飛び込む!!成功だ!
………………………………
ブス……ブス……ブス……
車体は着陸と言うより、滑り込む形で通気口でクラッシュしていた。
「これで引き返すことは無理になっちゃったわね…キース聞こえる?」
『問題ないよ、ソフィアから送ってもらったデータだと、そこから奥に進んで通気口を上昇すると最上階まで行けるみたいだね』
「問題はどうやって昇るかよね…」
悪霊の記憶ではスパイ映画のようにワイヤーを射出して昇っていた、一応人数分のワイヤーはあるが…
ウゥーーーー!ウゥーーーー!
なんだ!?サイレン!
「タカヤ!なんなの!?あれ!扉?閉まっていくわ!」
暗い通気口でも夜目が効くのか、俺には何も見えないがアリスは遠くにある扉が閉まっていくのが見えるらしい。
「やっぱ対策されてたか!!走るぞ!」
全速力で走る俺とマックス!
人類レベルだと、相当速いみたいだけど飛ぶように駆け抜けていくアリスには敵わない。
「アリス!一人で行くな!何があるか!」
暗闇に消えた、アリスが歩を止め二刀流の剣を抜いて警戒している背が見えた!
「マックス!ライトを!」
マックスの持つサブマシンガンから光が照らされ、広い洞窟のような通気口が照らされ……そこには…
「タカヤ……なんなの?こいつ!上の穴から降りてきたわ!」
なんだよ……こりゃ……ロボット!?
俺達の前に立ち塞がるガン◯ムみたいな黒い…10mはありそうなロボットが……
「アースガルズの人型破壊兵器!オベリスクよ!!そんな……対軍兵器がこんなところで!」
マシンガンを連射するマックスだが、弾き返され歯が立たない!
ウィィーーーーン……
「迎撃対象ロック・オン!戦闘モードに移行しますメーサー砲発動」
なんか光ってるんですけど!エネルギー溜めてるんですけど!!
「逃げるわよ!!タカヤ!あれを食らったら骨も残らないわ!!」
逃げるったって!!何処に!?
一本道で遮蔽物も無い………
駄目だ!!殺られる!!!
ザンッ!!!
「えっ!?」
「えっ!?」
マックスとハモって声を出してしまう……
気がつけばガン◯ムが真っ二つに割れ接着剤じゃ修復不可能な姿になって……
ガシャーーーーン!!!
倒した!?
アリスが剣を振り降ろした形で静止していた………
「驚いたわね…この体と剣の切れ味……向こうより力が出るし、剣も相当な業物(わざもの)よ」
「流石ですわ!アリス様!!その剣は超硬合金で製作しましたの!それでも、あの巨体を真っ二つなんて!!」
俺達だけじゃなく、ソフィアと本人のアリスも驚いている……
『そのホムンクルスの体は僕が少々魔改造させてもらっててね…それでも……ここまでとは…精神体との相性がいいのかもしれないね』
「オベリスクはミサイル程度じゃ傷もつかないのよ……馬鹿げてるわ……」
驚愕するマックスに向かいアリスはガン◯ムの向こうにある扉を指差す。
「完全に閉まっちゃったわ…」
大きな通気口を防ぐ形で、なにやら金庫のような頑丈そうなゲートが閉まっていた。
『僕の出番だね!ソフィア!現在位置を!セキュリティーコードを解析するよ…まあ数時間もあればハッキング可能…』
スタスタとゲートの前まで歩いて行くアリス。
ゲートの隙間に指を突っ込み………
「はぁぁぁーーーーー!!!!」
メキャメキャ!!メキ!!グシャ!
「ふぅ…開いたわ!人くらいなら通れるでしょ?」
あの頑丈そうな扉が…まるで粘土のように変形し人が通れるように、こじ開けた………
「タカヤ……ワタシ…アナタを諦めるわ♡浮気なんてしたら今度はアナタがオベリスクになっちゃうもの♡」
いや……そりゃ……さ…男だから…アリス以外の女の子見て……鼻の下伸ばしちゃうかもだけど……
バチバチと音を立て無惨な姿になったガン◯ムが………俺を警告しているような気がした……
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