第34話 接触感応



首輪を切るかどうか躊躇した……




「たぶんタカヤと同じで紋章が無いならサイは使えないけど…廃人にはならないと思うわ」


見た所…紋章が消えた以外は何の変化もない。


「だけど、切った瞬間にどうなるか」


『切ってみろ大丈夫だ』


本当だろうな!


生命を切れない勝利の剣はアリスの体をすり抜け、首輪だけが綺麗に切れた。


手足を曲げたり伸ばしたり、体の確認をしているアリス。


不意に飛び上がり5mほど垂直跳びして着地し目を閉じる。



「体の重さは消えたけど…駄目ね導力が通らないどころか、感じることもできない」



アリスを抱きしめる…



「ちょっと!なにやって!人前!!」

「まあ♪大胆ですわ♡」

「ぬっ……ぐふぁぁ!!!」




抱きしめる腕に力が入ってしまう……


「よかった……解けたんだよ…呪いが……これで3年なんて…」



「タカヤ……」



あの仮面野郎はやっぱりユーマだったのか?自らが呪いにかかりアリスを助けに……





………………………





「どうぞ、こちらへ英雄タカヤ・シンドー様」



あれを見て、もう衛兵に疑われようもなく。


アーカーシャの寺院で神官の間に案内される。



ドアを開かれると黒髪に褐色の肌で白いワンピースの神秘的でエキゾチックな妖狸族の………



期待はしていなかったが、やはりソフィアやリンと同い年くらいの少女が佇んでいた。



「なんや!英雄や言うから、もっと中性的美少年かと期待したのに残念やわ〜」



こっちのセリフだよ!!クソガキが!!!

 

「あなたが妖狸族の…はじめましてソフィア・マールと申します」


「ふ〜〜ん、あんたが共感能の妖兎族………」



なにやら品定めでもするようにソフィアに顔を近づけている。


「あんた!!可愛え〜な〜♡ほっ

ぺた!ツネっていい?」


「えっ!?あの私は…」


ソフィアを思いっきり抱きしめている妖狸族の少女




冷静に見つめている俺が居た……


守銭奴に男色……次はどんな変態………いや、変異体でも驚きはしない。



「あっ!自己紹介がまだやったわ、ウチはアイラ・ティワリ 一応接触感応が出来る神官ってことになってる」


ソフィアから離れ一応神官らしく振る舞うアイラ



「アイラ早速なんだけど、この剣から何か読み取れるか」


「え〜…なんで、そんなんやらなアカンの」


まあそうだろうな、神官とはいえボランティアじゃない。


「金なら払う」


「嫌やわ〜、何でも金、金!どっかの狐と同じに見んとって、ウチは、そんな安い女とちゃうで」


「じゃあ何が欲しい」


「そうやな〜、そこのソフィアがウチと今夜一緒に寝るってのはどうや」



……………いや…考えすぎるな…俺は何て汚れた大人なんだろう。


そうだよ、子供が一緒に寝たいなんて、お泊り会みたいなものじゃないか。


同い年の友達も出来ない寺院に隔離され寂しいのだ。



「思いっきりギューして♡耳とかサワサワして♡メチャクチャにしてやりたいな〜♡げへへ」


ヨダレでも垂らしそうなアホ面晒しながら妄想の世界に入っているアイラ。


「いつものタカヤの顔にソックリだわ」


こんな!アホ面なの!?




いや!!駄目だろ!!これ!保護責任者として!あのエドワード王にぶっ飛ばされるぞ!!


「私は別に構いませんわ♪」


「駄目に決まってるだろ!!あの顔どう見ても危ないぞ!貞操が!!」



「失礼やな〜、そんなん違うわ!!ウチは可愛いもん見たらメチャクチャに抱きしめたくなるねん、ハムスターとか握りつぶしたくなるの分かるやろ?」




わかんねーーーよ!!!




「ガーーハッハッハ!童子同士!変な心配せんでもよかろう!」


「大丈夫ですわ♪タカヤ様!お姉様とも一緒に寝てますし♪」



「決まりやな!ほな剣見してみ」



ふと……部屋のソファーにある大きな熊の、ぬいぐるみに目が止まった……


腹がへこみ…綿が飛び出し…眼球のガラス玉も半分飛び出していて不気味なオーラを放っていた………




…………………………




魔法陣のような床の上に置いた剣にアイラが手を着き、一瞬白い発光がしたかと思うと


アイラは数時間起きなかった……


「ん……う……なんや…これ」


「気が付きましたわ!」


これが普通なのかと待ってたけど、あまりにも長いから助けを呼びに行こうかと思っていたところだ。



「この剣は、この世の物と違うな、初めて見たわ………こんなん」


再び剣に両手を重ね…目を閉じる



『あんたが、この剣の持ち主やろ』

『やはり、俺を感知できるのか』



なんだ!頭の中に直接アイラと悪霊の声が響いてくる。



『アリシア・ヴォールク、あんたの恋人が死ぬ前に託したアンチアカなんとか…なんやろ』



『アンチアカシック・レコードプログラムだ………雑音が入らない!?』


『この剣の使い方分かったから、剣の力借りてな、その何とかからの干渉は防いでる』



悪霊から情報が引き出せるってのか!


『あんたの世界は地球、そんでその世界は死にかかってる』


『そこまで見えるのか…』



地球!!やっぱり俺と同じところから!

でも…死にかかってる!?



『ん〜〜これ以上は何て言ったらいいか分からんわ〜見たことない物ばっかりやったし』



『俺も同じ世界から転移してきてる!俺が聞いても答えてもらえるのか?』


『ほな会ってみる?』


『会えるの!?』


『ソフィアと二人なら出来るんちゃうかな』


剣から手を離しアイラはソフィアの手を握った。


「ちょっと協力してや」


「共感能で、ですか?」


あのリンとやった超感応か!



……………




魔法陣の中に入るよう言われ真ん中に座る。


「ちょっと深いとこまで行くから、どれくらいで帰ってこれるか知らんで、もう夕方やから暗くはなるやろうな」


ソフィアとアイラが手を繋ぎ、剣を持つ俺を囲む。



虹色の魔法陣が浮き上がり3人を包み込み……


「ハーーーッハッハ!アリス!見つけたよ!!!」


黒い霧が部屋に充満してくる。


この声と霧はキース!!よりにもよって!こんな時に!!




「なんなん!?タカヤ・シンドー!フィールド出して!」


フィールド?あのバリアか!


立方体のフィールドを展開するが、消耗しているのか、俺達3人しか入れない!


「お取り込み中…失礼するよ…」


ドアから、あのキザ野郎が抜け抜けと入ってくる。



「 ちょっと!!中止!ストップ!!!感応止めて!」


「無理や!!もう発動してる!!!世界の狭間まで飛ばされる!!」




「心配するな!!我輩に任せろ!!!」


マックス!!でも、あの霧は!


「紋章が無いならキースの呪いは効かないはずだわ!」


アリス!!



「ガーーハッハッハ!こんな時に我輩が体をはらんで、どうする!!行って来い!」


「呪いさえ無ければ剣で負ける気はしないわね」



マックス!!アリスを頼む!



そこで視界が途切れ暗闇に落ちていった。






……………………






暗く何も無い空間を歩いている、自分の姿はハッキリ見える……


転移される前にトイレで見たのと同じ……



!!!!!


誰か居る!あれが悪霊か!


走っていき近づいてみると………


黒い髪に黒い眼、見慣れないスーツのような服に眼鏡…………




あれは……………俺!?




「この姿では、はじめまして…になるのか…英雄タカヤ・シンドー…俺は神藤 貴也だ」



眼鏡をかけていて雰囲気は違うが、どう見ても自分の姿がそこにあった。



「どういうことだよ、まだ俺の体乗っ取るのに執着してんのか?」



「違う!これが俺の本来の姿だ」



「だいたい、何で俺と同じ名前なんだよ!お前……誰なんだ!?」



「……そうだな、何から説明すればいいのか……まずはタカヤ・シンドー…お前のことか…」



俺のこと?俺のことなんか、俺が知っとる。




「お前は、英雄だと騒がれているが…違う…お前はトリックスターのアーキタイプを付与された人工精神体だ」




なんだよ…それ…




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