第24話 国際デート9〜スペイン人〜
これは僕がスペイン旅行で最初にマッチして、最初に会ったスペイン人女性との出会いのお話。
デートというのもおこがましいかもしれないものの、一応最後になんか誘われたのでデートにしてしまおう…笑
彼女の名前はアダ。
年齢は同い年だった気がする。
全身に刺青を入れているインパクトのある女性で、特に背中全体を覆う刺青はかなりのものだった。
1番最初にプロフィールを見つけた時は、きちんと見ておらず、適当にいいねしていたのだろう。
マッチ通知が来て、『お!やった!』と思った矢先、全身刺青であった。
刺青が一つ二つあろうがなかろうが、僕は気にしない。
しかし、流石に顔以外の全身が刺青だとかなりビビってしまうものである。
見た目は普通。
茶色っぽい髪に少しカールを入れたセミロング。
細長い顔に高い身長。
胸はあまりなさそうだ。
プロフィールにポケモンなど日本のアニメやゲームが好きな他、韓流アイドルにハマっているとのことだった。
ポケモン好きに悪い人はいない。
そう思って勇気を出してメッセージを送ってみた。
とんとん拍子で話が進み、会う約束をこぎつけた。
先に待ち合わせ場所に到着した僕は、キョロキョロとアダを探した。
『背が高すぎないといいな。背の高い女性でもいいけど、きっと僕の身長に驚いて、嫌がるだろうな。』
そんな不安を抱えながら待っていると向かいから写真通りの女性が歩いてきて、誰かを探している様子だった。
案の定、背が高かった。
『はー、嫌われる』
ため息をつきながらアダに声をかけた。
明るい表情で挨拶をしてくれ、少しホッとしつつ、夕食場所を探しに歩いた。
会った時からテキパキと話す人で人見知りの僕には大変助かった。
しかし、気になったことが一つ。
段差があるところでは絶対に段差に上がらないまま、僕の横を歩いた。
僕は身長差を気にされていることが嫌で嫌で仕方がなかったが、別に背が低いからといって冷たくされるわけではなかった点は安心した。
僕らはアダのおすすめのレストランで食事をした。
基本的にはアダが話す一方だった。
アダは友人に裏切られ、親にも裏切られ、弟は鬱で引きこもり、母は歳。
自分が頑張って家族を支えないといけないが、友人の裏切りで精神をしばらく崩していたそうだ。
人とご飯を食べるのはかなり久しぶりで、人と会うのも久しぶりなようだった。
そのわりに話が止まらないのは、彼女の性格が故か、アダも緊張していたのかはわからない。
話は結構盛り上がって、歩きながら解散した。
僕は『全身刺青なんてその人本人の人柄とは関係ない。こんなにいい人だっているんだ。』という発見が嬉しかった。
嬉しかったあまり、僕はジェシカにもらったメモを思い出しながらお礼メッセージを送った。
『今日はありがとう。あなたのように家族思いの人に出会えて良かった。大変な時期だろうけど、あなたの心の温かさはきっと家族にも届いているよ。また裏切りにあうのが怖いと言っていたね。あなたのような優しい人を裏切る人は今後現れないことを願ってます。』
多分少し違うけど、何となくこんな感じのメッセージを送った。
このメッセージが良かったのか、アダとはその後半年以上連絡を取り合うことになった。
アダが定期的に近況報告をしてくれていたので、僕も送るようにしていた。
また、ビデオコールをすることもあった。
実物の背中の刺青を見たいというと、見せてくれたりもした。
そしてある時、こんなことを話した。
「弟が遠距離で付き合っている彼女とオンラインセックスをしてるんだって。それで満足いくのかな?やったことある?」
「オンラインセックスか。聞いたことはあるけどやったことはないなあ。どうやるんだろう。」
「ね、気になるよね。ちょっとやってみたいと思わない?」
「いやー、僕はいいかな。やるならやっぱり直接の方が気持ちとかも伝わるし」
「…」
このような会話を度々繰り返した。
また、ある時は
「私、最近思うの。恋愛に身長差は関係ないって」
というメッセージが送られてきた。
僕はこれに対して何という返事をしたのか覚えていないものの、僕はあまり付き合う気はなかったため、素っ気ない返事をした。
それ以来、アダから連絡が来なくなった。
いつもアダから連絡が来ていたのに、ついに嫌われてしまったかなと不安になった。
僕は友達でいたいのだが。
僕が不思議に思って連絡を入れると返ってきた。
しかし、今まで2週間程度おきにきていたメッセージが来なくなって僕は察した。
ナタリーの時のように対面であれば、あまり乗らなくてもやっていたかもしれない。
しかし、僕はこの時、自分はなんだかんだで誰とでもやれる人間ではないんだなと実感した。
そしてなにより、アダとは友達としていつづけたかった。
はっきりと友達でいたいと言っていれば、何か変わっていただろうか。
せっかく友達が増えたと思っていたのに、すれ違いで関係がなくなってしまうのは、何とも悲しいものである。
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