第21話 国際恋愛~タンザニア人元モデル~

ジェシカが帰国して少し経った頃、僕はリフレッシュ休暇をいただいた。


リフレッシュ休暇とは途上国に駐在する人が途上国から離れて気分転換をする権利を有給休暇とは別に与えられる制度である。


僕は1週間の休みをもらって、以前気になっていた女友達のいるスペインへ行くことにした。


スペインに行くにあたり、首都までおりてきたのだが、その時たまたまTinderで僕好みの女性を見かけたのだった。


彼女の名前はジェニファー。たしか23歳と僕にしては珍しい年下の女性だった。


目つきが鋭く、ストレートのショートヘアが印象的だった。

小柄で細身、クールな女性は僕の好みだ。


なによりも僕が大学生の時に片思いしていた子に似ている気がした。


違いと言えば、肌の色くらいだと思っていた。


ジェニファーの写真を見て僕は興奮した。


「おお!」と叫んだほどだ。


『この人とは絶対にマッチしたい!』とウキウキしながらスワイプすると、見事にマッチした。


僕は力強くガッツポーズをした。


興奮が冷めないうちに僕はすぐにメッセージを送った。


簡単な自己紹介をしたうえで、


「一目ぼれした!すごくきれいだからデートしたい!」


ジェニファーはすぐにOKの返事をくれた。


ただ、僕はスペインに行く予定だったため、「何日に旅行から帰ってくるからその日に会おう!」となんとか約束にこぎつけた。


僕はウキウキしながらスペインに向かった。


スペインでも色々とあったのだが、それはまた別の投稿で記す。


スペインにいる間も時々彼女と連絡を取り合っていた。


そしていざケニアへ帰国する前日に「明日会おう!」と約束した。


ケニアに戻ってすぐ、僕はシャワーを浴びて、着替えた。


約束の時間は20時ごろだったと思う。


少し遅い時間だったが、時間はジェニファーが指定してきた。


アジア料理を食べたことがないと言うので、おしゃれなアジア料理レストランで会うことにした。


どきどきしながら彼女を待った。


少し遅れて「ごめん、遅れたー」とハスキーな声が聞こえてきた。


そこにはドレスに身にまとったジェニファーがいた。


『おお、思っていたよりもだいぶ声が低いな』と驚いた。


ジェニファーは「デートに行こうなんて言うお誘い初めてだよ」と笑いながら僕と会ってくれた理由を説明した。


話を聞いていると、ジェニファーはタンザニア出身のモデルで両親の仕事の都合でケニアに引っ越したらしい。


趣味はクラブで週末は男友達も女友達も一緒にクラブに行っているらしい。


この時点で僕は趣味が合わないと冷めてきたのだが、


マリファナも吸っていると言い出して、一気に冷めた。


『もうどうでもいいや』なんて内心思っていたのだが、


「食事のあと、どうする?どこ行く?」と聞かれた。


どこにも行くつもりはなかった。


食事をして、良さそうであれば、また別の日に食事に行くつもりだった。


「クラブ行く?クラブ行かないとつまんないよね」とまるで僕もクラブに行きたいかのように言われた。


バイタクことバイクタクシーを拾ってジェニファーのおすすめだというクラブへ向かった。


バイタク代を出そうとしたら、ジェニファーが「私が出す」と言って出してくれた。


ジェニファーに手を引かれながらビルの最上階にあるクラブに入った。


室内はとてもおしゃれだった。


地方の真っ暗な野外クラブとは違って明るかった。


高そうなテーブルや椅子が置かれ、バルコニーまであった。


音楽は大音量だが、僕好みの洋楽が良く流れ、プロジェクターを通して映像も流れていた。


そこには欧米のおじいさんたちが若くてきれいな現地の女性たちを口説いていた。


『は~、こういうところは新鮮だなあ。みんなこんなところで相手を探しているのか』と初めて行く現地の高級クラブに圧倒されていた。


ジェニファーの友人たちも来ていたようで、友人たちのグループを見かけては、あいさつに行っていた。


僕も一緒にあいさつに連れていかれるときもあって、その際にはみんなにひゅーひゅーといじられていた。


ジェニファーは友人たちにいじられると照れながら笑っていた。


彼女がワインをボトルで注文して、テーブルを確保すると、周りのダンスに交じって「私たちも踊りましょう」と言って誘ってくれた。


彼女は他のカップル同様、僕の股間にお尻を擦り付けて、上下に動くダンスをした。


周りの女性、みんな同じ動きをしていた。男の股間にお尻を押し付けて、激しく腰を動かしていた。


男性はと言うと、女性の腰に手を置いて、腰を動かしていた。


完全に立ちバックの動きだ。


「ほら、早く!」と彼女に急き立てられ、僕も周りと同じように体を動かした。


今でも思うが、あれはダンスと呼べるのだろうか…。


地方のクラブでも似たような動きをする人たちは多かったため、きっとこれが普通ではあるのだと思うが。


僕の下半身は秒で硬直した。


それに気づいたジェニファーは、すぐにダンスを止めた。


「行きましょう。セックスなしでデートとは言えないもんね」と言って僕の手を再び引いてクラブを出た。


再びバイタクに乗ると、僕の泊まっていたホテルに向かった。


僕らは僕の部屋に入った。


一番高い部屋を予約していたのだが、たまたまダブルベッドが2つある部屋であった。


その部屋を見た彼女は「なんでベッドが2つもあるの?私と別々に寝たいの?」と冗談ぽく笑った。


僕たちは順番にシャワーを浴びた。


その間、僕はこの日のために念のためと残しておいた日本から持参していた最後のコンドームをベッドに置いた。


僕がシャワーを浴び終えるとジェニファーは部屋を真っ暗にして先にベッドの中に入っていた。


僕はタオル1枚巻きながら、ジェニファーの眠るベッドに入った。


するとジェニファーの手が僕のあそこに伸びてきて、手こきを始めた。


硬くなったのを確認すると、横たわったまま僕のものを自分の中に入れた。


「あ、コンドームあるよ」と言ったのだが、何も返事がなかった。


彼女の中にあっという間に挿入された。


挿入された瞬間、これまで静かだったジェニファーが


「あ、大きい」


とつぶやいた。


『横向きでやるのは初めてだな』と不安に思いながらも、そのまま腰を振ってみた。


『思っていた以上に、大変かも、この姿勢』なんて思いながら腰を動かした。


腰を動かし始めると再び


「大きい・・・」


とつぶやいた。


スペインにいた時に何度かヌイていたことが幸いして、秒でイクことはなかった。


しかし、数分も持たなかったと思う。やっぱりあっという間にイッテしまった。


「終わった?」


これまで「大きい」としか言わなかった彼女が聞いてきた。


「うん」


と僕も静かに言うと、2人でシャワーを浴びた。


シャワーを浴びているとき、彼女はまた元気なジェニファーに戻っていた。


「クラブでも大きいのかなと思ったけど、こんなに大きいとは思わなかった」とけらけら笑っていた。


彼女は先にベッドに戻って、再び同じ姿勢で僕を待っていた。


僕は再び彼女の横に寝て抱きしめると、再び手を動かした。


再度彼女が僕のものを握って自分の中に入れていった。


「うーん、やっぱり大きい」とにやけた声で言われ、僕は再び腰を動かした。


やっぱりあっという間にイッテしまった。


再びシャワーを浴びて、僕たちは寝ることにした。


「ねえ、そういえば中に出しちゃった?」


「え、うん。コンドームつけなかったし、外に出そうとしても出させてくれなかったじゃん。」


「あー、そうね。じゃあピル飲まないと。」


そういって彼女は眠ってしまった。


僕は早朝に赴任地に戻らなくてはならなかったため、朝起きてすぐに部屋を出た。


「えー、私を置いていくの?さみしい」


とジェニファーは甘えた声で引き留めた。


僕は申し訳なさと、はたから見たらくずだなと思いつつも、既に彼女に冷めていたこともあって、「ごめんね」と言ってそそくさとホテルを出た。


『うーん。セックスできたのは良かったけど、思っていたタイプの人ではなかったあな。酒好き、クラブ好きなだけならともかく、大麻もでしょ。無理だなあ。しかもクラブにいろんな男や女と行ってるということはヤリまくってる可能性もあるんだよね。しまったなあ…。』


という具合に後悔していた。


後悔と同時に、最後のコンドームをホテルに忘れたことを思い出してがっかりした。


不思議なもので、彼女に冷めてからは顔は好みでも全く連絡をする気にならなかった。


逆に、何故かジェニファーが僕を恋しがるようになった。


毎日のようにジェニファーから「今度いつ会える?」、「私どうせ暇だから僕君の赴任地に行くよ」、「ねえ、寂しいんだけど」と連絡がきた。


僕はやり捨てた感があって申し訳なくも思っていた。


とっとと興味が失せたと言えばいいのだが、なんだかそれも申し訳なくて、連絡がきたら一応返事はするようにしていた。


僕は寮に人を呼ぶ際には許可をとらないといけないことや周辺国にも出張に行くことから、気軽に会えないと言い訳をしていた。


しかし、あまりにも寂しいと言われるので、ついに僕は折れた。


「じゃあ、今度の連休に国立公園にでも行くか」というとものすごく喜んでくれた。


「私、行ったことないの!うれしい!楽しみ!」


「なんとか国立公園(サファリ)に行けるよう手配してもらってもいいかな?」


「いいよ、私がまず僕君のいる町まで行くね。その後は一緒に行こうね。」


ジェニファーはハイヤーを手配してくれたため、僕は公園内のホテルを予約した。


僕も日帰りでしか行ったことがなかったため、少し奮発して高級ホテルを予約した。


国立公園の中にあるロッジ。


野外で大自然に囲まれながらシャワーを浴びることができた。


ロッジとロッジの間は距離があったうえ、木で簡単に塀が作られていたため、周りからは見えない。


また、メインロビーには大きなプールもあった。


僕たちは国立公園で野生動物を見て、ホテルに入った。


夜の野生動物を見るプログラムまで、野外シャワーを一緒に浴びた。


野外シャワーでは解放感がすごかった。


僕のあそこは10代に戻ったかのごとく、頻繁に硬くなっていた。


シャワーを浴びていない服を着ている時ですら頻繁に勃つ僕のあそこを見て、ジェニファーはいつも笑っていた。


僕の欲望に応えてくれるかの如く、僕らはシャワーを浴びながら立ちバックで何度もセックスをした。


夕陽がとてもきれいで、どんな高級ホテルの部屋よりもロマンチックだった。


この時はただただ静かに陽が沈むのを2人横に座りながら眺めていた。


夜の野生動物を見るツアーでは2人とも既に疲れていた。


だからその後すぐ僕らは寝ついた。


朝起きて、今度は朝日を浴びながら野外シャワーで立ちバック。


夕陽ほどではなかったものの、これもなかなか感動した。


ジェニファーは「すごい、きれい!こんな経験初めて!」と終始はしゃいでいた。


お昼のチェックアウト時には「延泊したい」と駄々をこねられたが、僕は仕事のため、赴任地戻りたいと言って、しぶしぶながら帰宅した。


帰宅するまでずっとあの開放感と壮大な自然に僕らは興奮していた。


僕は彼女に一気に冷めたというのに、ずっと笑顔で嬉しそうにしているジェニファーを見ていると愛おしく思えたのだから不思議なものだ。


僕はこの旅行の際に、タバコとマリファナは嫌いだと伝えてみた。


するとしばらくジェニファーは考え込んで


「もしそれが理由で私と一緒にいたくないと思うんだったら止めるよ」と言ってくれた。


ジェニファーは首都に帰った後、「次は僕君の寮に泊まりたい」と何度もお願いしてきた。


「タバコとか吸わなければいいんでしょ?吸わないよ。約束する。」


僕はその言葉を聞いて、了承した。


彼女は週末来ることになった。


バス停まで迎えに行くと、いつも僕を見かけては嬉しそうな顔でバスを降りて、抱きしめてくれた。


「あー、寂しかった」


僕は彼女の荷物を運んで、寮に戻った。


その日を境に2~3週間に1回、彼女が僕の寮に来るようになった。

僕が出張でいない時以外は、大体いつも遊びに来てくれたことになる。


アメリカ人のジェシカが帰国して、ずっと僕一人だけだった静かな家は賑やかさを取り戻した。


僕たちの寮での過ごし方はある程度決まっていた。


地方都市は特にやることがないため、買い物と外食以外はだらだらと動画を見るかセックスをするかだった。


ジェニファーは僕がコンドームをつけることを嫌がっていたため、毎回生だった。


僕はそれが不安だった。


「ねえ、毎回生でやってるけど怖くないの?他の人とも生でやってるの?僕は不安なんだけど」


「何言ってるの?今はあなたとしかやっていないから心配しないで。不安な時はピルを飲むから安心して」と笑いながら返された。


ジェニファーとの関係は出会ってから4か月近く続いた。


その間、会わない週も会ったのだが、なんだかんだで僕らは一緒にいた。


初日に一気に冷めた彼女への想いは、何度も数時間かけて僕の元へ来てくれた彼女のおかげで再び温まっていた。


一方で、この頃1か月だけではあったが、短期滞在していたオランダ人女性に僕は思いをよせていたり、ウガンダに短期で出張時に出会ったケニア人女性と肉体関係を持ってしまっており、罪悪感もあった。


ジェニファーは、そのころ僕の想いがさほど強いものではないと多分気が付いていた。


連絡する頻度もお互いに減っていたし、僕が首都に出ると言っても会わなかった。


それでも最後まで僕の寮に遊びに行きたいと言っては遊びに来てくれた。


僕たちは互いに好きとは言わなかった。


正直、付き合っているのかどうかよくわからない状況だった。


ただ、ジェニファーが決まって言うのは、


「私、あなたとのセックス好きだわ。できることなら毎日したい。」


だった。


また、セックスを1日中やっていた時には、


「あなたのセックスはやさしい。痛くないし、怖くない。これは今まで経験したことがないの。」


なんてことも言われた。


セックスをしたり、映画を一緒に見ているとき以外、彼女は退屈そうだった。


僕といるのに、友達と長電話することもあった。


だから、一時は彼女も僕のことを想っていてくれたかもしれないけれど、僕たちは多分、最初から最後まで身体だけの関係だったのだと思う。


アプリで彼女を見かけた時ほどの熱は僕にはなかった。だから何でもかんでも受け身でいることは多かった。そんな僕に魅力など、あるはずがない。


そもそも、もともとの生活スタイルも違う。恋人らしい恋人関係になるはずがなかった。




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