第13話 念願の彼女〜韓国人②〜

キムと2人で演劇を見に行ったあの日を境に、僕たちの距離は一気に縮まった。


「ねえ、あの日、あの山道走った時、どんな気持ちだった?」


とキムが聞いてきた。


「え、めちゃくちゃ緊張した。なんか出そうで怖かった!」


と返すと、


「私も怖かった!すごい緊張した!」


とゲラゲラと2人で笑った。


「今度、また2人で何か観よう!そうだ、映画でも観ようよ!日本映画と日本のアニメ、私好きなんだ~」


とキムに誘われて


「お!いいね!観ようか!いつにする?」


「今日は?この講義のあと!売店にお酒とおつまみ買って観よう!」


「おっけー!他誰か誘う?」


「2人でいいんじゃない?」


話はとんとん拍子で進んだ。


講義のあと、さっそく僕らはお酒とおつまみを買いに行った。


ところで、僕はほとんどお酒が飲めない。


ビール1缶飲めれば上出来。


しかし、キムは違った。韓国人は酒が強いと聞いていたが…。


キムは毎回大きな缶が6本入ったセットを3つ4つ買っていた。


「そんなに飲めないでしょ!?!?!?」


と驚愕していると


「え?そう?普通じゃない?」


と、ポカンとした顔で言われた。


「私が全部飲むから大丈夫だよ~」


とけらけら笑うキム。


半信半疑で合計24本くらい買っていた。


付け合わせにチップスやクッキーを買った。


いったん僕の部屋にすべての食料品を置いて、キムは自分のパソコンを取りに、自分の寮に戻った。


キムと僕の寮は少し離れていた。


徒歩で10分は歩く距離だ。


とはいっても、その日はやけに戻ってくるのに時間がかかった。


『あれ?パソコンを取りに行くだけだよなあ』


と思いながら待っていると、あっという間に夜になった。


「ごめんごめん、シャワー浴びてたら遅くなっちゃった!」


と笑いながらキムはやってきた。


そこから狭い僕の部屋の床に座って、ベッドに寄りかかりながら、キムのパソコンで日本の映画を観た。


僕の部屋はワンルームにシャワーとトイレが付いていた。とても狭く、シングルベッドと小さめの机と椅子を置くとほとんどスペースがなかった。


かろうじて机とベッドの間に成人1人寝ることができるくらいのスペースしかなかった。


僕らは椅子をはじに寄せて、パソコンを床に置き、ベッドに寄りかかった。


狭いからほぼ密着していたと思う。


ドラマから始まって、クレヨンしんちゃんの映画まで、何本もぶっつづけで観た。


僕は大きなビール缶1本をなんとか飲み終えたところで、残りの20数本のお酒はキムによって飲み干されていた。


僕は寮のみんなで以前おこなったパーティーで余ったビールを追加で持ってくることになったほどだ。


ほどなくして、観るものがなくなった。


もう24時を回っていたと思う。



僕たちは酔った勢いで、キスをした。


狭い部屋に2人で何時間もいたからだろうか。


告白とかそういうのもなく、ただひたすらキスをした。


その日、キムは僕の部屋に泊まっていくことになった。


そう、流れでセックスをすることになったんだった。


最後の映画を観ているとき、キスシーンが流れたのだった。


それで「私もやってみたい」と言われ、キスをした。


僕のあそこは完全に硬くなっていた。


キムが僕の下半身を見て、


「うふふふ」


と酔って真っ赤になった顔で、笑みを浮かべた。


僕は恥ずかしさと同時に見てほしいという願望が湧き上がっていた。


酔った勢いで、僕は


「僕のあそこ、見てみたい?」


と聞いた。


するとキムは


「うん」


と静かに答えた。


最初に脱いだのは僕だった。


キムがフェラをしてみたいというので、やってもらうことになった。


初めてのキムのフェラは痛かった。


歯が当たって、気持ちよさがなかった。


それでも一生懸命やってくれた。


僕が「いきそう」と言うと、キムは飲んでみたいから口の中に出してと言った。


男の精液はまずいと聞いたことがあったため、何度も「まずいらしいから飲まなくていいよ」と言ったのだが、キムは聞く耳を持たなかった。


それで、僕はキムの口の中にたまっていたすべてを出した。


キムは飲みこもうとしたものの、気持ち悪くなったようで、なかなか飲めなかった。


困惑というか、変に嬉しそうというか、複雑な表情だった。


「気持ち悪いでしょ!?いいよ、吐いてきなよ!」


と言ったのだが、首を横に振ってようやくの思いで、飲み込んだ。


「好きな人のすべてを受け入れたいから飲んだ」とキムが言うと、僕はキムのことをいとおしくなって抱きしめた。


抱きしめたのだが、早く口の中をゆすぎたかったキムは、「ごめん」と笑いながら洗面所へ走った。


その後、僕たちはセックスをした。


キムは「私、初めて・・・」


と緊張した目つきで訴えてきた。


「僕もあまり経験ないから一緒に勉強しよう」


といって、始まった。


実際問題、僕は基本的に受け身でしか経験がなかった。


だから挿入するにもすごくとまどった。


2人であーでもない、こーでもないといった感じで、試していたと思う。


ようやく入って、ことを済ませた。


僕は「彼氏はいたんでしょ?なんでずっと未経験だったの?」と素朴な質問を投げかけてみた。


「キスはしたことあるけど、セックスは結婚する相手とじゃないと嫌だったの。」


「へ~。そういえば、初体験だと血が出るとかなんとか聞くけど、出なかったね」


「別に全員が全員血が出るわけじゃないよ」


とキムに少しあきれられてしまった。


とはいえ、お互いにとっては大きな一歩だった。


この日を境に、僕らは付き合うことになった。


キムは他の寮生が心配するといけないと言い、洗濯を自分の寮ですることにした。


1週間に1~2回、洗濯で自分の寮に戻る以外、キムは基本的に僕の部屋で寝泊まりすることになった。


今振り返ってみても、キム以上に身体の相性が良かった人はいない。


お互いセックスのことをよく知らなかったため、一緒になってどうすると気持ちよくなるのか勉強したことが良かったのかもしれない。


2回目のセックスの時、キムのフェラが急激にうまくなっていた。


「なんでこんなうまくなったの!?」と驚いていると


「へへへ…。実は寮に戻った時、ネットで調べて勉強したの。僕君を喜ばせたかったの。気持ちよかった?」


彼女の気づかいに感激した僕は、キムにももっと気持ちよくなってもらおうと、キムのことを研究した。


キムはキスが好きだった。唇だけでなく、全身をキスすると体をクネクネと動かしながら、時折びくびくと体が反応し、真っ赤な顔で叫んだ。


キムが僕の部屋で寝るとき、セックスをしない日はなかった。


18時ごろにはご飯を食べて、19時や20時になると、3時や4時まで毎回ひたすらセックスをした。


キムとのセックスで特徴的だったのは、キスの長さだった。


舌を絡めた濃厚なキスを何時間も続けた。


19時に始めたとすると、少なくとも22時まで止まらなかった。


途中疲れる度にキスをしながら時計を見ると時間の経つ早さに驚いたものだ。


毎日何時間も何時間もキスをするから、人生で初めて唇がひりひりと痛むようになった。


キスをしていない時でさえ、ひりひりと痛んだのだが、キムは平然としていた。


僕の唇が弱いのかな…?


とキスと唇の痛みについてネットで調べるも、何も出なかった。


キムはとにかく僕の精液を飲むことが好きだった。


いや、好きと言っては誤解を生むのかもしれない。


口の中に出すたびに、まずそうな表情をしていたのだが、口の中に出さない日はなかった。


ある時からキムは「イク時はイク前に一言言ってほしい」と言うようになった。


そのおかげで僕は、出す前に一言声をかける習慣がついた。


キムはコンドームを使うことも嫌がっていた。


かといって、ピルを使うわけでもなく、女性用の避妊具を使うわけでもなかった。


キムの言い分としては、人工物が自分の体内に入ることが気持ち悪いのと、妊娠は自然に任せたいとのことだった。


だから中に出してほしいという気持ちも理解はできたのだが、僕はまだ若すぎたのだと思う。


キムにお願いされるままにすることもあれば、ためらって外に出すこともあった。


そして毎日のようにコンドームの必要性を訴えかけた。


ようやく、キムが折れてくれたのは、生理が大きくズレた時だった。


「生理、来てないよね…?大丈夫かな…。」


毎日のように効いていた僕にあきれて、


「時々周期はズレるものだから心配しないで」


と耳にたこができるほと聞かされた。


しかし、一向に生理が来ないでいると、ついにキムが分かったと言って、コンドームの着用を許してくれるようになった。


キムの感性は、時々僕の創造の斜め上をいっていた。


僕は時々本気であきれていたのだが、今思えば、そうは言ってももう少し丁寧に接するべきだったと後悔している。


ある日、僕たちはニコルの寮に食事に招待された。


ニコルの寮の前には木々が生い茂っていた。


そこに、大きな大きなカタツムリがいた。


キムはそれを見て「おいしそ~!」と目を輝かせながら言った。


ニコルと僕は目を大きく開いて、「え、まさかそれ食べないよね?」と聞くと、


「え?なんで?私韓国で普通に食べてたよ!フライパンで普通に焼いて食べるの!」


たしかに、食用のカタツムリも世界にいる。


しかし、そのカタツムリは野生で病原体の宝庫。


「やめてやめて、食べないで!」とニコルと僕は全力で止めた。


するとキムはがっかりした表情で、しかし欲しい顔をしながら、カタツムリを見つめていた。


その日はキムが自分の寮に帰って洗濯をする日だった。


後日、カタツムリの話になった時、ニコルは改めてキムに聞いた。


「あのカタツムリ、食べてないでしょ?」


キムは、驚いた表情で


「う、うーん、食べてないよ~」


としどろもどろに答えていた。


多分、食べたのだろう、、、


そしてその食べた口で僕はディープキスをしているのかと思うとなんとなく口をゆすぎたくなった。



キムのハチャメチャストーリーは他にもある。


ある日、ニコルとキムが教会帰りに野生のベリー類を見つけ、とって食べた。


おいしそうに食べる写真とジャーに大量に詰める写真が送られてきた。


次の日、まじめなニコルが講義に出ていなかった。


連絡をしても返事がなく、心配した僕とパウロはニコルの寮に向かった。


チャイムを押すと、ニコルがげっそりとした顔で出てきた。


「・・・なに?今パジャマだし、体調悪いんだけど・・・。」


「いや、連絡したのに返事がないから心配で・・・」


「あ、お見舞いに来てくれたのね。ちょっと着替えるから待ってて」


着替え終わったニコルは僕とパウロを部屋に招き入れてくれた。


ニコルに話を聞くと、

「昨日野生のベリーを食べたの。私は食べたくなかったんだけど、キムが大丈夫と言って食べるから食べてみたの。そしたらこのありさま。お腹痛いし、下痢はひどいし…。」


僕とパウロは不思議だった。


キムは今別の講義を受けている。ニコルの寮に来る前に会ったキムはとても元気だった。


ニコルと僕は「まあ、キムはカタツムリ食べるほど胃が強いんだろう」と結論付けた。



なんでも食べるキムは僕の性液もなんてことなかったのかもしれない…。

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