第12話 念願の彼女〜韓国人①〜
国際恋愛で一番最初に彼女と胸を張って言えた相手は韓国人のキムだ。
キムは僕がイギリス留学していた時に出会った身長170cm近くあり、モデルのようにスタイルがいい、7歳年上での美人女性だ。
笑顔を絶やさないとても明るい女性で、冗談もよく言うし、かわいらしく愛嬌もあり、どことなくオーさんを思い出させられる性格だった。
一番最初に学部の集まりで挨拶をした相手だが、その時から僕の心はなんとなく奪われていた。
その他、同じ学部内で仲良くなったのは、フィリピン人のニコル。僕よりも10歳年上の女性だ。
僕はフィリピンに1か月以上旅行していたこともあり、ニコルと出会って早々話が弾んだ。
そして、ブラジル人のパウロ。パウロは僕より1つ歳が上で、最も年齢が近い友人として仲良くしていた。
パウロは日本に興味のある男性で、ことあるごとにパウロは僕を飲みや食事に誘ってくれた。
ニコルとパウロは秀才で、講義の議論やグループワークでは常に率先して発言をし、その頭の良さを周囲に見せつけていた。
2人とも頭がよく、まじめな性格だったため、2人はよく一緒に勉強していた。
僕は2人に誘われるがまま、2人の秀才に挟まれつつ、共に時間を過ごした。1人だけ頭が悪かったので、出来杉くんとしずかちゃんの間に挟まれるのび太の気持ちだった。
最も、僕はニコルに異性としての興味はなかったが。
当初、キムと僕はそこまで仲が良かったわけではない。
どちらかというと、ニコルとキムが2人ともカトリックということで、この2人が大体いつも一緒にいるところで、僕やパウロもニコルに誘われて合流する形が多かった。
僕がアグネスと距離を置くようになったころ、クリスマスが近づいていた。
周りの留学生も、イギリス出身者も一時帰国/帰省で寮を空ける中、キムは寮に残る同期を呼んでクリスマスパーティーを開いてくれた。
クリスマスパーティーでは、男は僕一人になってしまった。
他の国からの同期も含めて女子会+僕という形のパーティーでは、恋愛話ももちろん一つのトピックとして挙がった。
その時、キムは今まで彼氏はいたが、セックスをしたことはないということを打ち明けた。
宗教的な理由かどうかはわからない。
僕は僕で、タイ人の彼女がいたことをみんなに共有した。
女子会ではあったが、なかなか楽しかった。
パーティーはあっという間に終わり、1人身にとっては長い冬休みが始まった。
年が明けて、あっという間に春が近づいてきた。
そのころにはすっかりアグネスと話すことはなくなり、僕はいつもの3人と勉強をしたり、ご飯を食べたりしていた。
この頃からキムと一気に仲良くなった。
時々キムと2人だけで外部の人を交えた無料の講義に出ては、講義に出てくる軽食を意地汚くもらうようなことをしては2人で盛り上がったりもしたものだ。
ある時、たまたま町へ買い出しに行こうとバスに乗ろうと、バス停まで歩いていた。
すると後ろからキムが走ってきて、突然腕組をされた。
「町に行くの?一緒に行こう~!」
ニコニコ顔で、超ご機嫌。
なぜ腕組をされたのか全く分からなかったのだが、身長差もあってキムの小ぶりな胸が僕の肩に当たって、少し興奮してしまった。
とりあえず、一緒に町にいくことにした。
町を2人で歩いていると、地元の演劇際のPRが行われていた。
地元の複数のパブや公民館のような施設で連日演劇が行われるとのことだった。
キムは「私、イギリスで一度でいいから演劇を見てみたいんだよね~」
というので、一緒に行ってみようと誘った。
寮に戻った僕は、さっそく演劇際の日程を調べて、キムに連絡した。
「これとこれとこれ、興味あるんだけど、見に行かない?」
「すごい!さっそく調べてくれたの!?私喜劇がいいなあ!」
「それならこの夜のやつかな。ニコルも誘う?」
「うーん、誘ってもいいけど、ニコル興味あるかなあ。夜遅いし、まずは2人で行ってみる?」
『仲の良いニコルを置いて、2人で行く』
この言葉に僕は心躍った。
『これはデートなのかな?なんでニコルは誘わないんだろ。。。』
そわそわしながらも、あっという間に予約した演劇の日がやってきた。
僕らはまず、町で夜ご飯を食べることにした。
そこから徒歩で10分もかからないところにある、会場となっていたパブに向かった。
夜ご飯を食べ始めたときには、まだうっすら空が明るかったと思う。
でも、パブについたころには真っ暗。
パブの地下に案内されると、そこには広い空間が広がっていた。
パイプ椅子と、簡易なステージがあるだけ。
薄暗く、ローカルの人しかいなかった。少なくともアジア人は僕たち2人だけだった。
入場のスタンプが何故かハートだった。
ハートのスタンプを手の甲に押され、2人で笑いながら写真を撮った。
いよいよ演劇の時間がやってきた。
薄暗い会場で、僕らは最前列に座ることになった。
初めて見る演劇、しかも、地元の。
緊張していると、キムも緊張していたのだろうか、僕の手を握ってきた。
そしていざ、演劇が始まると、喜劇というよりただの漫才のようではあったが、最初から最後まで会場は大笑い。
横を振り返ると、キムも大笑い。
握っていた手は、最後まで話さなかった。
笑いの熱が冷めないまま、2人で寮に帰った。
熱が冷めないため、バスに乗らず、歩いて帰ることにした。
道中ひたすら、感想を語り合った。
その時間はおよそ1時間ほど。
イギリスの夜は暗い。
特に田舎に行けば、街頭もまばらで歩くのを少し躊躇する。
僕らの寮は、町はずれに遭った。
寮に戻る時、小さな小山を通っていくのだが、深夜だったため、周りに人は誰もいなかった。
風がなびく音ばかり聞こえ、なんとなく不安な気持ちが高まった。
キムも同じだったのだろう。
ぎゅっと僕の手を握った。
1歩1歩足を進めるごとに不安と緊張が高まった。
風の音と心臓の音、そして僕たちの吐く息の音が耳元で大きくささやいた。
すると、草むらから何かが動く音がした。
ガサガサガサッ!
僕らはぞっとして、
「走ろう」
と言って、2人で全速力で走って寮まで戻った。
寮の前に到着すると、2人でゲラゲラと笑った。
「なーんか怖かったね!」
「でも、楽しかった!ありがとう!」
僕たちは互いにお礼を言って、その日は解散した。
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