第9話 国際恋愛~ドイツ人②~

3人で過ごす中で、エンマと僕の2人で過ごすことも増えていった。


ある時、エンマから


「あなた、アグネスのこと好きでしょ?」


と唐突に聞かれた。


「アグネスのハウスメイトもみんな気づいてるよ」


と付け加えて。


「なんでわかるの!?」と聞くと、


「いつも目で追ってるじゃん。バレバレだよ。アグネスも知ってる。」


まあ、少しあからさまだったかなとは思っていたけど…。


それからエンマと2人になる時は、大体僕の恋愛相談になった。


エンマは僕を応援してくれていたが、アグネスには彼氏がいた。


出会ったときにいた彼氏は、チベット人でドイツにいた。


うまくいっていなかったようで、すぐに別れた。


だからこそ僕は可能性があると信じていた。


しかし、ひと月も経たないうちに別のドイツ在住のチベット人と付き合い始めた。


まだ純粋だった僕はショックだった。


そんな簡単に恋人を乗り換えられるのか・・・?

もう何か月も会ってない人といきなり遠距離で付き合えるのか・・・?


ショックと同時に不思議な自信はどこからか沸いていた。


いや、長く続くわけがない。だって、遠距離だよ?


と、僕は気にせず積極的にアグネスを誘った。


そういえば、アグネスも僕の気持に気付いているとエンマが言っていたけど、どういう想いで僕といつも会ってるんだろうかと少し疑問に思うこともあった。


時々、アグネスだけが僕の寮に来て一緒にご飯を食べた。


でも、何をするわけでもなく、ただただ深夜まで2人で過ごすばかりだった。


ある時、

「もしドイツに来ることがあったら言ってね。私の実家に泊まっていきなよ」


と言ってくれた。


どういう意図があるのかわからなかったが嬉しかった。


嬉しかったけど、この意味がなんとなくすぐに分かった。


ある日、エンマが失恋した。


エンマが僕達に愚痴を聞いてほしいということで3人でアグネスの部屋に集まった。


僕はほとんど聞くことしかできなかったが、エンマはひたすら泣いていた。


既に深夜になっていたこともあって、アグネスは3人でアグネスのベットで寝ようかと提案した。


男性を泊めてはならないルールなのにあっさりと誘われた。


というか、キングサイズのベットとはいえ、3人でどう寝るの。


僕を泊めること自体抵抗ないことにも少し驚き、僕は帰ると言って家を出た。


やっぱり、男としては見られていないのかな、とこの出来事を経て痛感した。


エンマの愚痴を聞いている時もアグネスは彼氏の話を時折出した。


その度に僕は少し凹んだ。


きっとヨーロッパでは親しい男友達なんてのは普通にいて、家族や自分の部屋に泊めて何事も起きないことが多々あるのだろう。


エンマが失恋の愚痴を聞いてすぐ、アグネスは冬休み前にも関わらず彼氏に会いにドイツへ頻繁に帰っていた。


既に冬休みに間近になり、冬は完全にドイツへ一時帰国するとのことだった。


あまりに頻繁にドイツとイギリスを行き来していた。


エンマと僕は2人イギリスに取り残され、アグネス1人自分の世界に篭ってしまった感覚になった。


僕はその間、眠れない毎日を過ごした。


深夜に眠りについたかと思えば、まだ真っ暗な時間帯に起きる。


そんな日々だった。


アグネスは僕との関係をどう思っているのだろう。


彼氏とどんな生活を送っているのだろう。


あれだけドイツへの帰属意識がなくて、ドイツに帰るつもりがないと言っていたのに、彼氏がいるとはいえこんなに頻繁に帰るなんて。


アグネスへの想いが複雑になっていった。

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