第8話 国際恋愛~ドイツ人①~

イギリスへ留学した初日、僕はdepartmentの歓迎会に参加した。


そこに居合わせたのが1歳年上のドイツ人、アグネスだ。


アグネスはドイツ人らしいがたいの良さが特徴的ではあったものの、小柄で僕よりも低かった。


ブロンドと薄いグレーがかった瞳、少しだけ見えたそばかすはチャームポイントだった。


だが、何よりも目に入ったのは、その体系からは想像しがたい大きな胸。


あまりに大きくて、服を着ていても分かる、おへそのあたりまで胸が覆っていたのは衝撃的だった。


アマンダの胸が普通サイズだったのでは?と思ってしまうほど大きい。


恰好は常にヒッピーのようなイメージ。


カラフルさとシンプルさを重ねそなえた感じで、チベットやアメリカ先住民文化に強い関心を持っていた。


きっとその辺から影響を受けた服装なのだと思う(テキトー)。


最初の出会いは僕が韓国人の同期と話をしている時だった。


突然隣に来て声をかけてきたため、挨拶をした。


ドイツ語を少し学んだことのあった僕は、「グーテンターク」と言うと、驚いた表情でドイツ語をぺらぺらと話し始めた。


僕はすかさず、あいさつ程度しかできないというと、「まあ、そうだよね」といった反応だった。


多分少し、からかわれていたのだと思う。


少数民族の文化に関心のあった僕は、すぐに彼女とうちとけた。


歓迎会を終えてそのままキャンパス内でコーヒーを一緒に飲んだ。


「私、あまりドイツに帰属意識がないの。多分、幼少期に何度も引越しをしていたからかな」というアグネス。


実は僕も幼少期には何度も引越しをし、転校していた。


だから友達づくりも大の苦手。


ますます共通点を見出した僕は彼女に関心を抱き始めた。


今思っても、あまりにも早すぎたのだが・・・。


僕は人生で初めて積極的に女性を誘った。


これまでの恋愛経験から受け身であり続けても運がないと恋は実らないと気づいたからだ。


積極的に誘えたもう一つの理由は、アグネスにはコロンビア出身の女性の友人エンマがいたおかげでもある。


エンマと3人であれば、気軽に友達として声をかけることができた。


だから3人でよく出かけた。


近隣の観光地に行ったり、買い物に出かけたり、一緒に勉強をしたり。


時が経つにつれ、アグネスと2人きりで過ごす時間も増えた。


一緒に勉強することが多かった。


時には野原で、時には僕の寮で。


彼女が真面目に勉強しているとき、僕は彼女に夢中で勉強に集中できないことが多く、


「なんで勉強しないの?」


と真顔で何度も聞かれ、困った。


2人で過ごす時間に慣れて、ようやく僕も勉強に集中できるようになると、今度はアグネスが集中しなくなった。


「なんでそんなに勉強してるの?」


と机の下から足をのばして僕の足を軽くけっていた。


ある時、アグネスとエンマと3人で夕食を作りあうことを企画した。


アグネスはベジタリアンだったため、野菜料理が必然となった。


初めてベジタリアンの人と食事を共にすることとなり、何を作るか頭を抱えた。


結果、僕が最初に作ったのは野菜の天ぷらだった。


だしは乾燥椎茸からとった。


反応は、いまいちだった。


正直、食文化の違いは頭を悩ませた。


次回はアグネスがご飯を作ることになったのだが、アグネスの作ってくれた夕食はクレープ。


クレープにジャムを塗るだけ。


誇らしげにドイツのクレープはフランスや他の国とは違うのだと言いながら、満足そうに食べていた。


フランスのクレープを食べたことはなかったが、正直小麦粉の味くらいしかしないクレープに違いも何もないのではないかと今でも思っていたりする。


僕はあまり夕食感のない料理に少し戸惑いつつ、完食して自分の寮に戻ってご飯を炊いた。


アグネスのハウスメイトも交えて、夕食会は何度か行われた。


しかし、一向にエンマが作る気配がなく、エンマの番になるたびに、僕が料理担当になっては、何を作るか頭を悩ませた。

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