第3話 2度目の国際恋愛〜歳上のタイ人②〜
久々のタイで1年間インターンとして滞在することになった僕。
不安と孤独から到着早々熱を出した。
タイ人らしい笑顔で職場は僕を迎えてくれたものの、熱が出ても誰もあまり気にしてくれなかったことが少し寂しかった。
同年代の友達を作れる見通しも立たず、言葉の壁も相待って、どんどんと孤独感が増していった。
特に仕事が終わった後の時間が苦痛だった。
何をするでもなく、1人でぼーっと過ごす毎日。
風俗なんて行く勇気もなければ、1人でレストランに入る勇気もなく、モールのフードコートで夜ご飯を寂しく食べるか作るかしかやることはなかった。
たまに屋台飯を食べることで気晴らしにはなっていたが、食べること以外やることはなかった。
週末は職場の人が気を利かせてドライブに連れていってくれたものの、言葉のせいで十分に楽しめることはなかった。
多分、段々と周りも気づき始めていたんだと思う…僕があまり楽しんでいないことを。
タイに来てから2か月が過ぎたころ、職場の人たちから
「元気ないねえ。もっと人生楽しまなくちゃ!」
といった言葉をもらうことが増えていた。
そんな僕を気にかけてくれたタイ人女性が2人いた。
1人はサイピンさん。
僕より13歳年上。食べることが大好きなぽっちゃり体系。いつも冗談ばかり言って周りを笑顔にするのが得意な人だ。彼女は既婚者で、旦那さんは海外に出稼ぎに出ていた。
もう1人が僕の初めての外国人彼女となった女性、オーさんだ。
僕より12歳年上。職場で一番きれいな女性で、背が僕よりも少し高く、細身でモデルのような女性。職場で数少ない独身者だった。
サイピンさんとオーさんは仲良しで、仕事終わりにサイピンサンのダイエットに付き合うためにオーさんが一緒にジムにいったり、2人で週末カフェをめぐっていた。
サイピンさんは僕をよくランチに誘ってくれたり、おやつの買い出しに連れて行ってくれた。
オーさんは、僕を笑わせようと毎日僕の席に来て、変な動画を見せてくれたり、くすぐられたりしてくれていた。
そんな優しい2人に僕は少しずつ心を開いていった。
特にオーさんは美人なだけあって、少し気になる存在となっていった。
ある時、オーさんが不機嫌な時期があった。
サイピンさんの話によると、好きだった人にふられたらしい。
普段笑顔を絶やさないオーさんがいつも不機嫌だった。
普段仕事に集中していない彼女が、毎日PCとにらめっこするようになっていたことはとても奇妙な光景だった。
オーさんが僕のデスクに来てくれる回数も減って、僕はさみしかった。
だから、これまでのお返しという意味もかねて今度は僕がオーさんのデスクを訪れるようになった。
面白い話はできなかったから、変な動画を一緒に見たり、どっきりをしかけて笑わせてみたりした。
見かねたサイピンさんもオーさんの気晴らしにと、3人で夕食を食べようと誘ってくれた。
酒豪の2人に囲まれながら酒を交わしていると、オーさんが涙目で好きだった人のことを話し始めた。
サイピンさんと僕は、ただただ話を聞いてうなずいた。
会計を終えて、帰宅の準備を進めていると、サイピンさんは別の方向かつ少し距離があるということで先に出た。
残った僕とオーさんは2人で帰ることになった。
まだ不機嫌そうなオーさんを見つめながら、僕は言った。
「オーさん、寂しい時は僕がそばにいるよ」
そうすると、オーさんは目を真ん丸にして笑った。
その日を境に、オーさんとのチャットが増えた。
オーさんから「今何してるの?」と仕事終わりに毎晩連絡がきた。
仕事中でもスタンプや絵文字だけのメッセージを何通も送ってくるようになった。
僕はそれがなんとなく嬉しかった。
彼女とのスキンシップも増えた。
腕を組まれたり、手を握られたり。
そのうち、『あ、僕、この人好きだわ』と思うようになった。
久しぶりの恋心に気が付いた時には何をしていいのかわからなかった半面、嬉しさであふれていた。
ベッドに顔をうずめて足をバタバタと動かして、『やばい、どうしよう!好きになっちゃった!しかも10歳以上年上!やばい!』と何度も一人でつぶやいた。
意識をしだしたら、危なかった。
職場で2人でいる時間が増えて、無駄にお互いスキンシップをとっていた。
まだ女性経験の少ない僕はそれだけで興奮してしまい、僕のあそこは元気百倍だった。
とはいえ、僕には苦い経験がある。
好きだった人にストーカー扱いされたことだ。
本当に僕は誰かを好きになっていいのだろうか。
誰かをまた傷つけやしないだろうか。
いや、それ以上に、僕はもう傷つきたくない・・・。
再び、心が沈み始めたのはタイに来て半年がたったころだった。
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