第5話 男なのに痴漢被害に遭った話

僕は中高は私立の男子校で電車通学をしていた。


中学生になって、制服を着ると、やはり僕のあそこの形が浮き彫りになっていたのが気がかりだった。


それでも冬服はそれほど気にならなかった。


ブレザーで上半身に視点が行くことで股付近は目立たなかったし、コートを着ればさらに目立ちにくい。


厚手の生地だったことも幸いだったのかもしれない。


気になったのは夏服だった。


紺色とはいえ薄い生地のズボンにワイシャツ一枚。


視線を遮るものはなかった。


だからだと僕は思っているのだが、中学3年間の夏服期間中、毎週のように知らないおじさん達から痴漢をされていたのだ。


初めて痴漢被害に遭ったのは一年生の時だ。


まだ学校に慣れ始めたばかりの頃、忘れもしない朝の通学時だ。



満員電車の中でおじさん達に囲まれて終点まで40分ほどの距離を座席側ではなくドアとドアの間の位置で立ち続けていた。


最も人が多くなった、終点まで残り駅がなくなったころだった。


時折誰かの手が僕の股間に当たっていた。


当初僕はたまたまだと思っていた。


しかし、次第に他人の指が僕の股間で動いている感じがした。


缶詰を開けるように小刻みに指が上下に動いていた。


僕は変だな…と思い少し不安に思っていると、


じじじ…


と音が聞こえた。


電車の動く音よりもはるかに大きく聞こえたのだから不思議なものだ。


同時に、ズボンのファスナーが降りていく感覚が体に伝わった。


痴漢だ


そう気づいた時には僕の身体はガクガクと震え出した。


やめろ!震えるな!周りに怪しまれる!


何度も念じたが、僕は自分の身体をコントロールできなかった。


そのまま気づくとおじさんの手が僕のズボンの中に入ってきた。


そして僕の太ももを触ってきた。


身体の震えは止まらなかった。


同時に僕はなぜか勃起した。


勃起したあれは僕の膝に向かって真っ直ぐと伸びていた。


それが幸いして、おじさんは僕のあそこの根元こそ触れど、先端あるいは頭には届かず触れなかった。


おじさんは僕の太ももやあそこの根元を無駄に丁寧に触り続けた。


僕は冷静になろうと広告に目をやった。


ふと、女子高生の視線を感じて女子高生の方を見ると、ドン引きした表情で僕の股と顔を交互に見ていた。


僕の視線に気づくと視線を逸らされた。


僕は痴漢被害を見られたことがすごく恥ずかしかった。


終点が近づくと、おじさんは慌てて僕のズボンから手を抜き、ファスナーを閉めようとした。


しかし、ワイシャツが邪魔して閉まらず、僕はファスナー全開のまま終点の駅に放り出されたのだった。



僕は突然の出来事に呆然とした。


当然、だれにも相談できなかった。


その日を皮切りに、僕は行きや帰りの電車内で冬服に切り替わるまで毎週1-3回程度痴漢被害に遭うことになった。


これは偶然なのだろうか。夏服を着用し始めた途端にこれほど頻繁に痴漢に遭うとは驚きだった。


車両や時間を変えても痴漢はいた。


人によってズボンの上から僕のあそこを揉むだけだったりもしたが、中には直接揉んできた人もいた。


僕の降りる少し前に触ってきた人もいれば、電車に乗ったから降りるまで1時間近くひたすら触ってきた人もいた。


いずれの場合も僕は勃起していなかった。


しかし、痴漢に気づくと勃起してしまった。


中にはあれをファスナーから外に出そうとする人も結構いたが、その度に勃起することで長さ的にも硬さ的にもファスナーからでは外に出せないよう偶発的自己防衛をすることもできた。



僕は部活のため夏休み期間も電車に乗っていた。


だから夏休み中も痴漢被害に遭っていた。


正直、僕は途中で痴漢慣れした。


触られる度にまたかと思いながら痴漢が終わるのを割と平然と待つようになった。


痴漢は怖かったが、少し気持ちいいと思ったことも悲しい事実だ。


次の痴漢を心のどこかで待ってしまうほど、複雑な気持ちにもなっていた。


しかし、一度かなり怖い思いをしたこともあり、それを機に僕は対策をとるようになった。


それは部活帰りの少し遅い時間だった。


ドアの端に立つとすぐにガタイのいいおじさんが僕の前に立ってきた。


しばらく何もなかったのだが、人がだいぶ降りて僕の駅も近づいた頃、その人は僕に覆い被さるように立つようになった。


ガラガラの電車内でなぜその人が僕に密着して、僕の道を塞ぐのか理解できずにいた時、その人は僕のズボンのファスナーを開けて手を入れてきた。


いよいよ僕は身動きが完全に取れなくなった。


おじさんは僕のあれをいじることなく、ただじっと立っていた。


さらに人が減るのを待っていたのだと思う。


僕は自分の最寄駅を過ぎてしまい、不安になっていた。


僕らの車両にほとんど人がいなくなったから、おじさんは僕のベルトをほどいて僕のズボンを開いた。


僕は既に勃起していて、トランクスの太もものところからあれが膝にかけて出ていた。


それに気づいたおじさんは僕の腰からトランクスの中に手を突っ込んで、がっとあそこを掴んで力づくであれを上向きにして外に出した。


つまり僕のペニスはおじさんによって腰から外に出されたのである。


全てが露出したわけではないが、僕のペニスが外に出され、おじさんは手が震えるのをおさえようとしつつ、息を荒げながら僕のペニスで手コキを始めた。


僕は恐怖を感じて身体が震え、頭が真っ白になった。


正直気持ちよさもあって、僕はどうしたらいいかわからなかった。


少しすると、隣の車両から誰かが移動してきた。


それに気づいたおじさんは慌てふためいた。


ちょうど駅だったため、反対側のドアから走って出て行った。


僕のことはそのまま放置して。


隣の車両から来た人は異変に気づいていたようで少し離れたところから足を止めていたのだが、おじさんが逃げるとほぼ半裸の僕に気づいて慌てて僕の方に駆け寄ってきてくれた。


僕はその女性が来た時に涙をこぼしていた。


多分30-40代の女性だった。


茶髪にスーツだったからOLさんだったのかもしれない。


大丈夫?どうしたの?


声を荒げながら心配してくれたが、僕は僕の最大限に大きくなっていたペニスを見られて恥ずかしすぎて辛かった。


警察や駅員を呼ぶと言われたが、大事にしたくなかったので、誰も呼ばないでもらった。


女性は最後まで僕を心配してくれ、僕に気遣って僕の最寄り駅に戻るまで隣にいてくれて背中をさすってくれた。


以来、僕は自分の身体を守ることを決め、鞄で股間を隠すようになった。


そのおかげなのか、高校生になったからなのか、夏服でも痴漢に遭うことはなくなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る