とある会社員の憂鬱

甘夏みかん

第1話

「お疲れ様でーす。」「お疲れ~。」お昼休憩になってミユちゃんがきた。私、ツムギは普通の会社員だ。週5で働いている。ミユちゃんは友達だ。私は今年27歳。ミユちゃんは20歳。年は違うけど、なぜか話は合う。「ねえ、聞いてくださいよ~、今度泊まりの旅行行こうって誘われて。」「え~またあの男~?やめたほうが良いよ~。」「やっぱりですかー?」いつものおしゃべり。「私クラブ行ってみたいんですけど、一緒に行ってくれません?」「良いよー。」たわいもない話をしていると、あっという間に昼休憩が終わる。事務の仕事をして17:00に帰る。家に帰ると同棲中の彼氏ミナトがいた。こいつは私の家に住み着いているヒモだ。ミナトはソファに転がったまま「おかえりー。」と言った。ミナトは生きるのが楽そうで羨ましい。この世界に甘え切っている。そんなミナトの姿を見ているとイライラしてきた。私はちゃんと今日も働いてきたのに。なんだこいつは。「良いよね、ミナトは毎日楽しそうで。」彼は「楽しいよ。」というと私の不機嫌を察知してか、外に出て行った。離れて時間がたつと私の機嫌が直ることを知っているのだろう。やっぱりこいつは生きるのが上手だ。ネットフリックスを見ていると、彼が帰ってきた。本当は私だって偉そうにミユちゃんに言える立場じゃない。私だって想像していなかった。27でこんなヒモ彼氏とだらだら暮らしているなんて。周りの同年代の友達は結婚したり、子供がいたり。私はとても結婚なんて考えられない。ましてや子供なんて。ミナトの中に子供という言葉があるのかも不明だ。だけど別れるのもなんか面倒で。結局この暮らしが居心地が良いのかもしれない。「明日も仕事だー。」お風呂に入ってごろごろしているとあっという間に寝る時間だ。明日のために寝なきゃいけない時間。あーあ。こうやってまた一日が終わっていく。きっとこうやって規則正しく毎日を過ごしていくことが社会人として正しいことなのだろう。だけど、たまに思う。ずーっとこの毎日を過ごしていくのかなって。毎日毎日、同じことの繰り返し。この先に待っているのは、結婚?出産?わかりきっている人生。ふと逃げ出したくなる。会社をやめる度胸はない。せっかく頑張って入った会社だ。友達もいるし、特に不満があるわけではない。27年間頑張って生きてきてやっと掴んだ生活。それが、この普通に見える私の毎日だ。だけど、たまに全部やめて遠くへいきたくなるのはなぜだろう。

日曜日、家から少し離れた河川敷にきてみた。一人、自転車に乗って。今日は晴れていて気持ちが良いな。大きな川は私の平凡な毎日を飲み込んでいくように、ゆっくりと流れている。向こうには大きな橋、その向こうには海が見える。しばらく川を眺めてまた自転車にまたがった。どこへも行けないけど。(彼氏はヒモだけど)明日からも頑張ろう。私のこの平凡な毎日をいきていくしかないんだ。だってどこへも行けないんだから。そう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とある会社員の憂鬱 甘夏みかん @na_tsumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る