第7話 植物魔法の力
二軒目ということもあってか、前回の半分の期間でアリスの家が建った。しかも、クオリティも少しだけ上がっている。かなり満足のいく出来に仕上がっている。これも慣れの力というここだろう。俺たちの経験値が間違いなく貯まっていることがわかる。
「ほんとにこれに住んでいいんですか?」
「ええ、そのために建てたわけですしね。その代わり、たくさん働いて貰いますから覚悟して貰いますよ」
「はい! 絶対役に立てるように頑張ります! 任せてください」
その意気込みを確認するかのように畑の方へと視線を向けると、そこには明らかに成長しすぎている作物の姿があった。まだ花は咲いてはいないが、蕾がついているわけだし、まだ春。植えたのは夏に収穫できるような作物だったと記憶しているのだが、そうではなかったのだろうか。
まあ、俺も別に畑仕事をやってきたわけではないからな。ちゃんと正しく覚えているわけではない。村の農家の人の手伝い程度しかしてこなかったわけだし。
一から全てをやるのは今回が初めてで、これが普通だと言われれば、そうなのかと納得してしまうのは間違いがないのである。
「えっと、毎日虫除けと促成の魔法をかけているんです。だから、こんなにスクスクと育ってくれただけで、本来はもっと遅いですよ」
と、俺の視線に気づいたか、そう教えてくれた。いや、それのせいで俺の目は大きく見開いた。そんなことがあっていいのかという驚きで頭がいっぱいになる。
促成ということは成長を早めているということだろう。作物の成長を早めれば収穫のサイクルが早まるわけで、一つの畑から取れる量が増えるということにならないだろうか。冬までの間に収穫の回数を増やせるとなれば、明らかな革命が起きる。少ない土地でより多くの人を養えることになり、他の土地を別の目的で使えるようになる。
それは一石で何羽を獲れるということか。考えるまでもなかった。
「そ、それって成長率はどれくらい上がるんですか?」
「毎日一日分成長する魔法をかけているので、大体二倍くらいですかね?」
「それってもっと成長率を上げられたり出来るんですか?」
そんなことができたら、食料には一生困ることはない。むしろ食料だけで一財産を築ける。植えて次の日に収穫なんてことになったら、この辺りの村どころか、国の飢餓がなくなる。
「それは出来ないですよ。魔力がすぐにすっからかんになりますし、それに土が死んじゃうんです。今もこうして生えている雑草を枯らして、栄養に変えられる量とかを見て、ギリギリのバランスで促成魔法は使っているんですよ」
「なるほど? そうですか。ひとまず、これが成長の限界の速度ということですね」
説明はいまいちわからないが、彼女の話ぶり的には何かを隠しているということではなさそうで、信じていいだろう。だが、間違いなく収穫できる作物の量が実質増えるようなものだ。食料には困らなくなれば、開墾や開拓により励める。
だとしてもかなりの魔法だし、こんな力があるのなら、たとえ戦闘で使えないとしてもかなり有益な存在として重宝されると思うのだがな。魔法使いの面子というのもよくわからないものだ。
「あ、そうそう、あとどれくらいの面積ならその魔法を全ての作物に使えますか?」
「え? そうですね、この倍は行けると思います。ただ、それをすると魔力が空っぽになって他に何も出来なくなるので、この面積の半分くらいの拡張で止めて欲しくはありますね」
なるほど。ひとまずは、その面積を農地にすることを目標にして、開拓していくとしよう。そのためにも放置している切り株をさっさと全部引っこ抜かなくてはならない。今日はもう遅いから、明日から始めなくては。
今は作物しか金に変えられるものがないのだから。何をするにも金はかかるのだ。
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