第5話 向いている仕事

 太陽が昇り、外で寝ていた俺とガッシュの男二人は日差しによって起こされる。久しぶりの感覚だ。この土地に来てすぐはよく野晒しで寝ていたものだ。それを思い出して感慨深くなる。よく頑張って家を建てたものだと、過去の自分を褒めてやりたくなった。

 家の扉が開き、そこから俺たちがしばらく寝床を譲ることになる客人、これからは同じ開拓地のメンバーが現れる。


「おはようございます、フーマさん」

「おはよう、アリスさん。よく眠れましたか?」

「ええ、もちろん。むしろ、わたしに家を使わせてもらって良かったんですか? わたしの方が余所者なのに」

「まあ、長い間野宿していたわけなんでね。少しくらいは家で寝たっていいでしょう。それにこんなオンボロ小屋、外と対して変わりませんよ」


 自虐しているが、ガッシュと二人で頑張って建てたものなので、愛着はあるが。このボロさも少し愛らしくある。まあ、いつかは綺麗に建て直したいとは思っている。

 ただ、アリスもその自虐に笑えば良いのかわからなかったらしく、愛想よく微笑んでいるだけであった。まだまだ俺たちの仲は他人行儀なもので、同じ開拓メンバーとしてはより親密な関係になりたいものだ。シンプルに美人と仲良くしたいだけでもあるが。それを表に出さないよう取り繕うだけのことはする。


「どうしました? わたしの顔に何かついていますか?」

「いえ、大丈夫です。新しい仲間の加入に笑みが隠せないだけですので気にせず」

「そうですか? わたしも早く一員になれるよう頑張ります」


 少し見過ぎてしまったか。これでアリスに嫌われるなんてことになれば俺はしばらく立ち直れないだろう。一緒に生活する仲間に嫌われて、開拓なんて不可能に決まっているのだ。

 今日からはしばらく、アリスの家を建てるために木材の伐採などが主になってくるだろう。ついでに土地も広げられるというものだ。使い物にするには切り株まで全て取り除く必要があるが、それはひとまず置いておくとする。

 今日の朝食は野草のサラダと小鳥の串焼き。肉は基本串焼きにすることしかできないのはもどかしい。もっと複雑な調理ができるように器具を調達なり自作したいものだ。


「美味しいですね」


 アリスの食べっぷりを見ると今日のはお気に召したらしい。よほどトカゲの丸焼きは堪えたか。まあ、俺も最初はかなり躊躇したから同じではあるが。いつかはそうも言ってられなくなるから、その時を楽しみにするとしよう。

 アリスは早速畑の手入れに向かってくれる。彼女はこの開拓村、村というか集落とも言えない小さな集まりの一員になるわけだなのだが、基本的には畑仕事を担当してもらう。植物魔法を扱う魔法使いにはこれ以上ないほどの天職だろう。

 まあ、魔法使いに農作業をさせているなんて俺の故郷の人間に言っても信じてはもらえないだろうがな。

 俺は魔法なんてものと縁がないために、植物魔法のことはよくわからないが、間違いなく作物の育成に何かしらの好影響を与えてくれることは自信を持っていたので、完全に任せることにして、いい結果を期待することにしたのだ。

 俺たちが畑仕事をしなくても済むことで他のことに手を出せる。まずはアリスの家が先だが、その後のことに胸を膨らませて、明るい未来を思い描くのであった。

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