第4話 仮眠と店番
家に帰ると駄菓子屋の店番をしているおばあちゃんが出迎えてくれた。
「おかえり。あんた、台所に弁当置きっぱなしだったよ。大丈夫だったかい?届けに行こうと思ったけど、あいにく腰が痛くてねえ…」
「そうなんだよ。朝から何も食べてなくてお腹ペコペコだよ…お弁当食べてくるから待ってて!」
飛んで行く靴なんかお構いなしに家に上がり、台所に走る。
見つけた。私の宝箱。
キッチンの上に風呂敷に包まれた弁当箱がポツンと鎮座している。
風呂敷をほどき、ふたを開ける。箱に閉じ込められていた香ばしい匂いが顔を包み込む。
何も考えずに口の中にかきこむ。ハンバーグ、トマト、白米、梅干し、ほうれん草の胡麻和え、エビフライ、すべての食材が口の中でぐちゃぐちゃに混ざり合う。
「おいおい、そんなに急いで食べたらのどに詰まらせるぞ」
何か言われたような気がするけどお構いなしに吸い込んでいく。
気づけば弁当箱は新品のようにきれいになっていた。
「あっという間に平らげてしまったな。バケモンだな」
「あんたに言われたくないよ」
「とにかく、ここまでよく頑張りましたね。素晴らしいです」
一時はどうなるかと思ったけど、命の危機を逃れることができた。今日はいろいろあって疲れた。
一息ついたら、大きなあくびが出た。空腹の次は睡魔が襲ってきた。
「眠いのか?今日は大変だったからな。少し寝た方がいいぞ」
「まだやることが残ってますよ。おばあさんの手伝いに行かないと」
「なに言ってんだ。眠くて何もできないんじゃ行っても無駄だ」
「閉店まであと少しです。休むのなんてその後でもできます」
「そうだね。そんなに眠いわけでもないし、手伝いに行くか」
弁当箱を片付けて店のほうに向かう。
「おーいー、またそいつの言うことを聞くのかよ。たまには俺の言うことも聞いたらどうだ」
「そんなこと言ったって、あんたの言うことにメリットがないんだもん」
「そんなことないだろ!ゆっくり休むことができるんだぞ!」
「別に休まなくても大丈夫だし…」
「やーすーめー!いいから休め!休むことくらい悪いことじゃないだろ!いいじゃんか!」
悪魔が子どものようにじたばたと駄々をこねている。ここまでされると気が引ける。
「なんでそんなに休んでほしいの?」
「それがおれの仕事だからだ!お前は休まないとだめなんだ!」
涙目でこっちを見つめてくる。悪魔としての威厳はどこに行ったのか。
「…わかったよ。休めばいいんでしょ。おばあちゃんにいてくるから待ってて」
「そんなことしていいんですか?おばあさんが困ってしまいますよ」
「もう客はこなさそうだし大丈夫でしょ。片付けも店閉めた後でもできるし」
そう言っておばあちゃんのいる店先に顔を出す。
「おばあちゃん、ごめんだけど少し疲れちゃったからお昼寝してきていい?」
「ああそうかい。今日も頑張ったんだね。お店のことはまかせてゆっくりお休み」
「やったな!これでゆっくり寝れるぞ!」
そばで聞いていた悪魔が宙返りしながら喜んでいる。そんなにうれしいことなのか。
まあ久しぶりに悪魔の言うことを聞いたし、そうなるか。
自分の部屋に戻り、布団に入る。目をつぶると一瞬で夢の世界に引きずりもまれた。
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