第1話 ずる休みと遅刻

カーテンの隙間から漏れた朝日が顔に当たる。心地よい時間を取り戻すためにふかふかの布団に身を隠す。


窓の外から小鳥が鳴く声が聞こえてくる。そういえばあの音もそろそろ鳴るはずなのに全然鳴らないな。


目覚まし時計に手を伸ばし、時間を確認する。


8:20


時間を確認したら時計を元に戻し、布団にもぐる。



…はちじにじゅっぷん!?



飛び起きてもう一度時計を見る。短針は8の文字を過ぎていた。


見間違いじゃなかった。走って行っても1時間目にはもう間に合わない。どうしよう…


「もう休んじゃえばいいんじゃないか?そっちの方が楽だぞ」


右肩のほうから声が聞こえてくる。振り向くと黒くて小さいあいつが羽ばたいている。私の中の悪魔だ。


「どうせ間に合わないんだし無理に行って恥をかくよりいいだろ」


「確かに、走るのも面倒だし休んじゃおっかな」


「ダメです。遅刻してでも行った方がいいです。周りの人に余計な心配をかけることになりますよ」


今度は反対側から声が聞こえてきた。左を見ると背の高いお姉さんがいる。私の中にいる天使だ。


「嘘をつくといずれ手に負えなくなります。それに行かなければ成績にも影響が出ます。なので早く準備していきましょう」


「確かに、風邪ひいてないのに休むのも罪悪感があるし行こうかな」


急いでハンガーにかけてあった制服に手を伸ばす。


「だ、ダメだ!行ってもいいことなんてなにもないぞ!ただ疲れて怒られるだけだ。だからベッドの上でゆっくりしておけ」


「なに言ってるんですか。今行かなければ今日さぼった分、明日に響きます。友達にノートを借りないといけないし、先生の話を聞けなくて自力で勉強する羽目になります。辛い思いをするかもしれませんが、行かなければもっとつらいことになりますよ」


「そうなんだよなぁ。友達に声かけるのもだるいし行き得かな」


服を着替えて部屋を出ようとする。


「おい!ベッドで寝たくないのか?ゲームもできるしやりたい放題だぞ」


「うーん、ベッドで寝てても暇になっちゃうだけだしなぁ。やっぱりさぼるのはよくないよ」


「その通りです。早く準備していきましょう」


「ちょ、待てええーーーっ!」


悲痛な叫びを無視してドアを開け、全力ダッシュで家を飛び出した。

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