第2話 強くてニューゲーム


「マリカ。前へ」


 開花の儀当日。

 ついにこの日が来た。

 今日神様がちゃんとセーブデータ継承を成し遂げられているか、わかる日だ。

 儀を執り行う高位聖職者ーー父が祭壇に私を呼ぶ。

 その顔には期待が見て取れる。

 ゴッデス家は聖職者系統の名門である上、この国ーーヨトゥン王国は戦争途上であるという背景もあり、戦闘職が至上とされているので聖職者系統の戦闘職、欲を言えば聖女を引き当てることを期待しているのだろう。

 残念ながら私が譲渡される職業は『裁縫士』なので、期待に応えられないが。


「マリカ。お前に譲渡される職業は……『裁縫士』だと……!?」


「よし!!」


 期待していた聖女ーー聖職者系統の戦闘職でもなく、聖職者に全く縁もゆかりもない生産職を引き当てたことに父が顔を赤くして額に血管を浮かび上がらせると、私はガッツポーズをとった。

 神様はちゃんとセーブデータの継承を行なってくれたようだ。


「マリカ!! 貴様!! よしとはーーう!? ううううう!?」


 これから父が期待を裏切った私を罵倒することはわかりきっているので、『裁縫士』の下位職である『聖女』のスキル《ディスペル》を使って、父の口を強制的に閉口させる。

 当たり前だが、聞きたくないことは聞かなくて済む方法があるのならば、それを使わない手はない。

 あとここでやることは自由になることだけだ。


「お父様、ご期待に添えず申し訳ありません。責任をとり、家を出させて頂きます」


 

ーーー


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