第3話 ゼロから始める裁縫生活


 自由になったのでひとまず商売道具ーー『裁縫士』として活動するために最低限のものを確保する必要がある。

 それというのも武器や服のデザインを否が応でも弄らせたくない心情のもと運営がただただ解放難易度を高くするために設定したもののために条件とされる下位職や職業解放武器に全く互換性がないのだ。


「確かスキル《裁縫》で必要だったのはアリアドネの針とアラクネの糸だったよね」


 なので道具を揃えにアリアドネとアラクネのいる場所ーーアセビ大洞窟に行く必要がある。

場所は遠く離れているが、『裁縫士』の下位職である『賢者』のスキル『空間魔法』を使って転移をするだけなので、移動についてはあっという間だ。


「暗……」


 早速転移してみると、前はイベント期間中だったこともあり他のプレイヤーが明かりーートーチを置いていたのもあって明るかったのだが、生憎この世界ではまだ誰も利用してないようで真っ暗だった。

『裁縫士』の下位職の『アサシン』のスキル『暗視』が発動しているので視界は確保できているが、私が暗い場所が苦手なので宙に灯り系のアイテムであるトーチを浮かべようと思うと天井に張り付いている長い白髪に蜘蛛の下半身を持った女型モンスターーーアラクネと目と目があった。


「こんにちは」


「……」


 アラクネは喋れるモンスターなので挨拶してみるが返事はない。

 だけど襲ってこないところを見ると、話を聞く気はあるみたいだ。

 試しに交渉してみよう。

 

「アラクネさん。糸くれませんか?」


 反応やいかにと思いアラクネの能面のような顔を見つめると口を動かし始めた。


「お前、強い。だから糸やる。でもその代わりお前こっち手出すな」


「わかりました」


 言い草が完全に盗賊に出会した村人のような感じだったが、とりあえずアラクネの糸ゲットだ。

 あとはアリアドネの針が揃えば、『裁縫士』として活動スタートできる。

 よし、洞窟は苦手だし、どんどん進んでアリアドネとエンカントしてささっと揃えてしまおう。


ーーー


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