ドラゴンのいる異世界で、ペアリングを
レマクルのでかい製鉄所の中で俺たちを出迎えてくれたのは、車椅子の少女だった。
「はるばる遠いところからご苦労なこって」
青い髪を二つ結びにして、白いカチューシャを付けている。
オーバーオールの作業着姿。
「ここに腕が立つ職人がいると聞いたぞ!」
「それは間違いなくあたい、ユノーちゃんのことよ!」
自信満々に、オレンジ色の瞳を煌めかせている。
可愛い子なんだけど、その足はどうしちゃったんだろう。
「ああ、これか?」
俺の視線に気付かれてしまう。言わせるのも酷かなと思いきや「そこの柱が倒れてきてよ。下敷きになっちまって」と話してくれた。何度も聞かれているのかもしれない。
「
ものすごく前向きだ。
見習いたい。
「んで、オネーサンは『ペアリング』を作ってほしいっつー話よね?」
「そうだぞ!」
ペアリング……。
「隣のオニーサンとのでいいのか?」
「うむ!」
ああ、製鉄所だから、シルバーの?
これから作るの?
「モア、ちょっといい?」
「ん?」
「なんで指輪を作ってもらおうとしているわけ?」
俺の質問に、モアは口をへの字にして「結婚指輪だぞ!」と答えてくれた。ペアリングだって言うからまあそうなんじゃないかとは思ってたけどさ。
「これは我がタクミからもらった婚約指輪。次に必要なものといえば、結婚指輪であろう」
現在左手薬指についている指輪を婚約指輪だと言い張ってきた。俺、プレゼントした記憶ないのに。そもそも結婚した覚えもない。届け出、いつ出した? というか、モアの戸籍ってどうなってんの?
知らないうちに俺とモアの仲が深まっているのは、なんだか気味が悪い。
「オネーサンさあ、盛り上がってるところ申し訳ないんだけど、指輪みてえな装飾品はレマクルじゃのうてキャロルなんよ……」
「そうなのか!?」
「あと、あたいは刀鍛冶だからこまけぇのは専門外ってのもあって」
何もかも間違っているっぽい。
残念だけどモア、ここは撤退の判断をするべきだよ。
「けれども、あたいをご指名とあらばなるたけ力を貸さにゃあ、名が廃るってもん!」
「お!?」
ユノーは自らの胸をドンと叩いて「いっそ二人で手作りするってのはどうだい?」と提案してきた。
なるほど、手作り。
身に覚えのない婚約指輪よりは、まあ、いいかな。
……なんか流されてないか俺。
「いいのか!?」
「あたいにお任せあれ。まずは型を作るところから!」
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