第44話 復讐の果てに

「……何があったんだ。」

 

 レインがアルフレッドが心配だと駆け出して行き、敵が居なくなってから少し。

 犠牲者も多数出た我々はなんとかその場を離脱し、俺だけでアルフレッドとレインがいるであろうここへ戻って来た。

 その場所に近付くにつれ、死体の数が増えていっていた。

 

「っ!レイン!」

 

 すると、眼の前にレインが倒れていた。

 傷は無く、外傷は全く見受けられなかった。

 が、レインの倒れている地面には血が広がっていた。

 レインの着ている服も血で汚れている。

 一見、レインが傷付き倒れているように見えた。

 

「一体何が……。」

「……どうやら、ケリはついたようですね。」

「……シャルか。……俺を殺すか?仕損じていた俺を。」

 

 背後にシャルが現れる。

 彼女も満身創痍だ。

 俺もだが。

 

「……いいえ。ここであなたを殺しても意味がありません。私は万全な状態の副隊長と戦いたいので。」

「そうか。それはありがたいことだ。」

 

 辺りを見渡す。

 すると、更に死体の多くなっている場所があった。

 ……あの先にいるかもしれない。

 

「アルフレッド!」

 

 呼びかけてみる。

 が、返事は無い。

 

「彼が負けた可能性は?」

「……ある。記憶を失い、手に入れたスキルを忘れていたら負ける可能性はある。」

 

 そのまま歩みを進める。

 すると、家の壁にもたれかかっている死体を見つける。

 

「シャイン……。死んだか。」

「なら、彼は生きていますね。……いえ、相討ちもありえますか。」

 

 すると、足音が聞こえた。

 そちらに振り向く。

 そこには、全身傷だらけのアルフレッドがいた。

 目は虚ろで、足元もおぼつかない。

 もはや立っているのがやっとといった様子だ。

 

「……私を殺すか?父を殺した私を。復讐を果たすのか?」

「……。」

 

 しかし、アルフレッドは答えない。

 ……いや、もはや喋ることすら忘れたのか。

 

「アルフレッド!俺が分かるか!?お前の名は!?」

「……。」

 

 すると、アルフレッドが倒れた。

 

「アルフレッド!」

 

 すぐに近くに寄る。

 近くで見れば見るほどよく分かる。

 アルフレッドの体は、もはや生きているのが不思議な程の状態だ。

 

「スキル『回復』を使えば良かったのに……。何故……。忘れていたのか?」

(……主様は最後に力を振り絞ってレインさんに使いました。)

 

 アルフレッドを抱き抱えたからか、ナイフの声が聞こえてくる。

 

(もはや立っているのがやっとの状態でシャインを殺し、おぼつかない足取りでレインさんの元に戻りました。)

 

 その時はまだ意識があったのか。

 

(いえ、意識は殆どありませんでした。ですが、懐にあった手紙を読んで、そう動いたのです。)

「手紙?……そうか。」

 

 アルフレッドが握っていた手紙を読む。

 血で滲んでいるが、読める。

 成る程。

 記憶を無くす前に書いたのか。

 アルフレッドに包帯を巻き、応急処置をする。

 そして、手紙を懐にしまった。

 

「……お前はアルフレッドを殺すのか?」 

「……いえ、その状態の彼は死んだも同然です。私達はここでおさらばしましょうかね。」

 

 生き残った仲間も少ないだろう。

 もはや再起は不可能と言える。

 

「……なぁ、俺達と共に来ないか。殺し合っていたとはいえ、魔王軍に未来は無い。それはわかってるだろ?命を無駄にすることは無いぞ。」

「……そうでしょうね。でも、私達の居場所はあそこですので。」

「……そうか。」

 

 ならば、無理強いはしない。

 

「では、さようなら。副隊長。また会うことがあれば、その時はよろしくお願いします。」

「あぁ。受けて立とう。」

 

 シャルは音もなく消えていく。

 元々彼女は忠誠心はなかった。

 現役の頃、俺達を殺そうとしたのも野心あっての事だろう。

 国のために命を燃やすような奴ではない。

 無駄死にはしないだろう。

 

「さて、帰るか。アルフレッド。皆が待ってる。」

 

 意識を失い、眠っているアルフレッドを抱えて皆の待つ場所へと戻る。

 レインも無事。

 アルフレッドも無事。

 死傷者も出したが、スロール殿達の兵も居る。

 バインド殿の所へ戻ろう。

 そして、始まるのだ。

 革命が。

 

 

 

 

 

 旅をした。

 始まりは只の復讐だった。

 気が付けば全ての事に復讐が関係していたと思う。

 レインさんとの出会いも、グロールさんとの出会いも。

 復讐を始めなければ無かった事だ。

 俺は恵まれていたのだろう。

 これまで歩んで来た人生は楽なものでは無かったが、そのお陰で出会えた人達が居る。

 だから、必ず守る。

 それだけの力がお前にはある。

 今お前は矢を受け、記憶が無くなってきているだろう。

 でも、お前ならば戦うはずだ。

 大事な人を守るために。

 でも忘れるな。

 お前を守るために戦う人もいる。

 彼女はお前を守り、傷つくだろう。

 何があっても彼女を守れ。

 それがお前に出来る最後の恩返しだ。

 大丈夫。

 いつかはまた、皆で楽しく過ごせるさ。

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奇襲スキル持ちの復讐劇〜スキル奪って無双します〜 @nakamurayukio

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