第37話 心の内 Ⅰ
「さて、何から取り掛かるか意見を集めよう。アルフレッド、まとめてくれ。」
「そうですね。今回は信頼の置ける協力者もおりますし、この地域の基本的な情報収集はいらなさそうですね。軽く意見を貰えますか?」
翌日、朝早くからバインドも合流し、スロールを含めて作戦会議を行っていた。
「そうですね。敵の諜報員を探すということでしたが、私の領地は様々な種族が入り乱れています。探し当てるのは簡単では無いでしょう。」
「それに領民達は仲間意識が強く、簡単に話してくれるとも限りませんしな。」
バインドとスロールの意見を聞く。
どうやら話を聞く限りでは簡単には行きそうに無い。
「じゃあ難民のフリをするのはどうだ?」
エドワードが挙手をする。
少し協力的になってくれたのはありがたい。
「……それも難しいかも知れませんな。」
「何故?」
スロールの言葉にエドワードが聞き返す。
「先程仲間意識が強いと言いましたが、それらは同じ村や地域同士で仲間を作っているからです。つまり、その組織内ではほとんどが顔見知りということです。新たに探りに入るのは難しいでしょう。」
「実際、私がいない時に難民同士が争う騒ぎもありました。やはり戦争をしている魔族と人間とでは相容れない所があるのでそょう。」
やはりそう簡単には行かないか。
「……グロールさん。」
「どうしたレイン。」
レインが手を挙げる。
「陽炎部隊が私達を追っているんですよね?」
「そうだ。……そうか、成る程。」
どうやらレインさんの言いたい事がわかったようだ。
「はい。ならばあえて隙を見せて陽炎部隊を誘い出し、捕縛、もしくは殲滅すれば良いのでは?」
「となると我々だけでは厳しいか……。バインド殿。よろしいか?」
その問いにバインドさんは笑顔で頷いた。
「ええ。勿論です。誘い出すのに最適な場所と人員を編成しましょう。」
バインドさんはスロールに目配せをする。
すると、スロールはすぐさま地図を広げた。
「この森なんかはどうでしょうか。兵が潜むのには最適かと。」
「いや、兵がそこまで行くのに目立ち過ぎる。それでは警戒されるだろう。」
グロールさんが地図を見渡す。
そして、市街地ど真ん中に指を指した。
「こういうのは敢えて目立つ場所でやるんだ。ここに兵を配置する。俺達はこの酒場へと入る。恐らく奴等はここに情報を集めに来ると踏んているはずだ。」
確かに情報収集といえば酒場だ。
ならばここに最低でも数人は配置されているだろう。
「あとは暫くここに滞在し、奴等が仕掛けてくるのを待つ。スロール殿は奴等が仕掛けてきたと同時に出入り口を封鎖。もしくは出てきた奴等を仕留めてくれ。」
「成る程。敢えて室内に突入し戦うのではなく罠だと悟り退却を開始した所を叩くと。」
グロールさんは頷いた。
「そうだ。そうすれば敵の士気は落ちる。戦でも使えるぞ。覚えておくと良い。……まぁ、逆に背水の陣となって厄介になるかもしれんがな。」
最後に面倒な言葉が聞こえたが、気のせいだろう。
だが、こういう時は大抵面倒な事になる。
覚悟はしておこう。
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