第31話 意義 Ⅱ

(……今後、こいつらが裏切らない為に……。)

 

 任務中。

 宿の部屋で、眼の前で飯をひたすらに食べ続ける二人を見る。

 緊張感に欠ける、頭の眩しい二人を見る。

 

(こいつらに、俺達の陣営で働く意義を与えなければならないか……。)

 

 任務前、グロールさんに言われた事を思い出す。

 

 

 

「良いか、アルフレッド。今の所お前の仲間は俺とレインだけだと思え。他は信用するな。」

「ナウルとゲルグ。それにエドワードのことですね。」

 

 グロールは頷く。

 

「あぁ。そうだ。今の所、お前の目的はあの三人に協力させる意義をもたせることだ。」

「エドワードはいいんですか?」

 

 グロールは暫く考えると口を開いた。

 

「……あいつについては少し見定める必要がある。そこについては俺に任せろ。お前はあの二人に専念するんだ。」

「……はい。」

 

 恐らく、グロールさんは何かに気付いているのだろう。

 エドワードの目論見か、それとも別の何かか。

 まぁ、今の所はこの人の言う通りにしておこう。

 それが最善だ。

 

「わかりました。でも、どうすれば……。」

「そこは自分で考えるんだ。考えることは成長にもつながるからな。」


 

 

 とは言われたものの、どうすればよいのか。

 大義名分を与える?

 父の復讐についてこの二人はどうとも思っていないだろう。

 そちらに持っていくのは厳しいか。

 では、金か?

 いや、俺に満足に支払えるだけの金は無い。

 

「アルフレッド君!戻りましたよ!」

「あ、お疲れ様です。……ついでにエドワードも。首尾はどうでしたか?」

「ついでとか言うな。あとさんをつけろ。どうもこうも無い。目立った報告はなしだ。」

 

 この二人には町中で怪しい人物がいないか張ってもらっていた。

 二人の知らせではここに陽炎部隊が来ているはずなのだが。

 そして、エドワードはレインさんと行動を共にすれば少しは大人しい事がわかった。

 レインさんならば何かしようとしてもエドワードを止めることが出来るからこの編成にした。

 グロールさんはというと、単独行動をしている。

 あの人ならば心配は無い。

 

「……レインさん。ちょっと良いですか?」

「何ですか?」

 

 レインを部屋の外へと呼び出す。

 

「エルフって……。魔王軍の中でとう言う扱いをされていますか?人間界では神に近しい存在って認識なんですけど……。」

「……そうですね。そこまで大差なく敬われてはいると思いますけど……。特別な存在ではあると思いますよ。」

 

 今までそこについては聞いてこなかったが、これは使えるかもしれないのだ。

 

「どれ位特別なんですか?」

「そうですね……。特に才能が無くても国家の幹部クラスにはなれるくらいですね。現に魔王軍幹部にも数人いますよ。なんでも、長生きだから経験豊富だろうと考えられているみたいです。」

 

 成る程。

 ということはエルフという種族は種族としての地位よりかは経験という点で重宝されているのか。

 だが、話を聞く限り一般的にはエルフという種族に対する価値観は大差は無いらしい。

 人間よりかは少し身近というくらいだろう。

 

「ん?長生きということは……。レインさんって……。」

「私ですか?562歳ですね。今日で。」

 

 長生きならば誕生日とかどうでも良くなるのだろうか。

 というか女性に年齢を聞くのは失礼だったか?

 ……まぁ良いや。

 

「……そうだったんですか……。因みにあの二人はエルフだって知ってるんですか?」

「いえいえ、私がエルフって知ってるのはごく少数ですよ。隊長とかそれくらいの立場の人だけです。軽く騒ぎになりますから。」

 

 ……ならば、使えるかも?

 

「……レインさん。」

「はい?」

「ちょっと……神になって下さい。」

 

 俺の発言にレインさんは戸惑いを隠せない。

 

「……はい?」

 

 だが、行けるかもしれない。

 あの二人に意義を与えることが出来るかもしれない。

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