第30話 意義 Ⅰ
「で、今後についてだが。」
皆が集められ、作戦会議が始まる。
「……こいつはいて良いんですか?」
「おい、こいつとは何だ。年上だぞ。ちゃんとエドワードさんとよべ。どんな状況でも年上には敬意を払え。」
俺の隣にはエドワードが立っていた。
ずっと俺を見張っている。
正直ウザい。
「問題は無いだろうさ。所詮ただの自警団員。何を聞いてたとしても、私達には敵わない。」
「……俺はお前達が何をしようとしてるのか、見定めるだけだ。」
こいつが何をしようとしているのかいまいちわからない。
シャインの方の真意は俺達も今の所不明だが、エドワードがそれを探り当てたとて、逃げることは不可能だろう。
こいつもそれは分かっている筈だ。
「で、話を進めよう。」
シャインの進行で話が進んでいく。
「まず、これから冬になる。つまり、魔王軍と王国軍は大規模な戦闘を行うことが出来ない。」
「雪も降れば戦どころではなくなるということですか。小競り合いは続きそうですが。」
俺の言葉にシャインは頷く。
「そこで、代わりに何が行われると思う?」
「……内政、国力を豊かにしたりして雪解けに備えることとかですか?」
すると、シャインは少し驚いた顔をする。
「君、国家運営に関わった方が良いんじゃない?」
「合ってたんですか?」
俺は適当に言ったのだが。
が、シャインは首を横にふる。
「まぁ、合ってはいるがそれは表の話だ。戦争に備えてやるべきことは他にもある。はい、エドワード君。」
「……俺も巻き込まれるのか……。情報収集とかか?」
シャインは笑顔で頷く。
エドワードは面倒くさそうにしつつも、俺の方を見て、軽く嘲笑う。
「こいつ……。」
「まぁまぁ、落ち着きましょう。エドワード君もあんまりやんちゃしたら痛い目見ちゃいますよ?」
レインが間に割って入る。
するとエドワードは少し顔を赤らめて、すぐに顔をそらした。
「……ちっ!」
「さて、話を続けよう。エドワード君の言った通り、両国は躍起になって情報を集める。色んな村に諜報員を放ち、敵の内情を探る。ということで、私達にも司令が出た。」
シャインは紙をテーブルの上に広げる。
そこには村の名前と蜃気楼のメンバーの名前が書かれていた。
「各々、書かれている村へそれぞれ向かってくれ。」
「……俺達はどうするんですか?」
だが、その紙には俺達の名前は無かった。
まぁ、国に俺達の事を話していないのならば当然か。
「あぁ。君達が捕まえて協力することになった二人が情報を話してくれてね。そちらの対処に向かって欲しい。」
すると、奥から例の二人が出てくる。
「あ、改めて元、陽炎部隊のナウルっす。」
「同じくゲルグだ!よろしく!」
ゲルグが元気よく挨拶をする。
正直うるさい。
捕まえた時はフードで顔は見えなかった。
ナウルは坊主頭だ。
単純だ。
分かりやすい。
ゲルグは……ハゲだな。
坊主ではない。
ハゲだ。
二人が揃うと眩しい。
「……で、情報って?」
エドワードが目を覆いながら聞く。
「相手の情報を探ることは勿論大事だが、情報が漏れるのを防ぐことも重要だ。この二人は陽炎部隊がそれぞれ何処に派遣されたか知っていた。君達にはそれの対処をお願いしたい。」
「……罠の可能性は?それに、この二人がいなくなったのなら、編成を変えてたりするのでは?」
シャインは少し考える。
「まぁ、相手も情報を探らない訳には行かないだろう。諜報員を置かないということは無いと予測している。それに、君が行けば大抵の事はなんとかなるだろ?それに、今回はあの人も来てくれるそうだよ?」
「あの人?」
すると、天幕にグロールさんが入ってくる。
完全装備だ。
かつて陽炎部隊で見た装備そのままだ。
「グロール副隊長!似合ってます!」
「そうか?レイン。お前もたまには装備を点検しておけよ。……アルフレッド。今回は俺も行くぞ。リハビリは完璧だ。この二人も俺が見張る。お前は『模倣』で俺の技を盗め。」
成る程、この人が来るなら安心だ。
レインさんもいるし、俺も十分戦える。
罠でも対応出来るな。
「さ、行く場所はここに書いておいた。好きな順番で回って来てくれ。その場所の諜報員を始末したら報告してくれ。そこに新しく蜃気楼から人員を派遣する。」
「了解です。任せて下さい。」
これは勇者を始末する第一歩なのだろう。
陽炎部隊の面々の技術を『模倣』し、スキルを奪って強くなる。
そして、勇者を殺す。
まぁ、頑張るとしよう。
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