第18話 六人目 Ⅲ
「おい!大丈夫か!?返事をしろ!」
村長が扉を蹴破り入ってくる。
昔は自警団の団長だったとかで結構強かったらしい。
もう一人は警備の人間か。
「奥様はどちらに!?」
「分からん!この時間は大体台所に居るはずだが……。」
二人は台所へ駆け寄る。
が、そこには何の痕跡もない。
「……くそっ!手分けしよう!」
「分かりました!自分は下を見て回ります!」
二人はそれぞれ建物の中を駆け回る。
ここまでは概ね想定通りだ。
「じゃ、向こうはやっちゃっていいんだな?」
「はい。奥さんを見つけられる前に片付けちゃって下さい。」
申し訳無いが警備の方には死んでもらおう。
俺が殺してスキルを奪いたかったが、不足の事態に対応できるとも限らない。
グレンに確実に仕留めてもらう。
欲しいのは村長のスキルだからな。
「じゃ、そっちも上手くやれよ。」
「はい。」
グレンは警備の人間を始末しに去って行った。
向こうは気にせずとも良いだろう。
「おい!大丈夫か!?」
二階が騒がしい。
どうやら見つけたようだ。
「……寝言か?それにしては……。」
奥さんがいたのは寝室。
ベッドにそのまま寝かせたのだった。
一見すればただ、寝ているだけに見える。
これならば油断させられる。
ナイフを握り、『隠密』を発動させる。
「むぐっ!?」
口元を抑え、ナイフを喉に当てる。
「っ!?」
が、ナイフは喉を掻っ切れなかった。
村長は手で咄嗟に喉をカバーしていた。
あまりにも想定外の事態に振り払われてしまう。
「……アルフレッドか?姿は見えんが、分かるぞ。お前がいずれ儂を殺そうとすることくらいはな。」
両手からは大量に血が流れている。
『奇襲』スキルは効いたらしい。
「これまでの被害者は喉を狙われていた。だから、喉を咄嗟に守って正解だな。お前の負けだよ。」
「……。」
スキルは解除しない。
まだ狙うチャンスはある。
が、一撃で仕留められないのなら意味が無い。
ならば……。
「……『ライトニング』。」
「ぐあっ!」
村長に放った『ライトニング』は見事命中し、村長は痺れ、動けないでいた。
「……じゃあな。クソ野郎。」
こいつが村八分にしろと言わなければもっとマシな生活が送れたかもしれない。
まぁ、そうでなくともその髪の色から虐められていたのは事実だが、それでもこいつには恨みがある。
「……ま、待て……。」
「黙れよ。」
話を聞かずにナイフを喉元に突き刺す。
血を吹き出し、悶え苦しみながら息絶えた。
ナイフが光る。
(スキル『調合』を奪いました。これがあればいつでもどこでも、材料が無くても、毒薬から回復薬、何でも調合することが可能です。)
「……よし。」
このスキルで生成した即死毒をナイフに塗れば喉を切らなくても殺せる。
そのための殺しでもあった。
「……ん。」
すると、村長の奥さんが目を覚まそうとしていた。
丁度いいな。
スキル『調合』を発動させ、即死毒を生成する。
それをナイフに纏わせる。
「……え?」
寝起きで意識が朦朧としていた奥さんの腹部にナイフを突き立てる。
すると、ほんの一瞬苦しんだ後、胸を抑え、暴れ、そのまま息絶えた。
毒の効果だ。
「ん?」
ナイフが光らない。
いつもならばここでスキルを奪えるのだが……。
(……どうやら、私が直接トドメを指した場合でなければスキルは奪えないようですね。すみません。このように使われるのは初めてでわかりませんでした……。)
「いや、これが知れただけでも収穫だ。別に有用なスキルを持ってた訳では無いし、良いよ。」
すると、階段からグレンが上がってくる。
「お。済んだみたいだな。スキルは何を奪ったんだ?」
「……今は取り敢えず離脱を優先しましょう。下は大丈夫ですか?」
グレンは頷く。
「おうよ。バッチリだぜ!」
「じゃあ二階も急ぎましょう。」
グレンは下の階で警備を始末した後、油を撒いてもらっていた。
そして、二階にも撒く。
全てに撒き終えた後、家の外に出て『ファイアボール』で火を付けた。
「よし。これで証拠隠滅完了だな。」
「……死体からバレる可能性もありますが、あれだけ油を撒いたので死体も完全に燃えるでしょう。さぁ、帰りますか。」
グレンの手を握り、『隠密』を発動する。
……何か嫌な予感がする。
今回の件、何かを見落としている気がする……。
まぁ、今は取り敢えず離脱を優先しよう。
考えるのは後だ。
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