第17話 六人目 Ⅱ
「で、どうやってやるんだ?警戒もされてるだろ?」
「……何か案はありますか?」
その答えにグレンは頭を抱える。
「何も無いのかよ……。」
もうこれで村の人間を殺すのは六人目となる。
一応考えはあったが、本業の意見を聞いておきたい。
「そうだなぁ……。いっそのこと家ごと燃やすのはどうだ?」
「それじゃあスキル奪えないじゃないですか。それに消防も来ちゃいますよ。」
……まさか。
「あ、じゃあ留守の内にこっそり忍び込んで毒を盛るとか。」
「だからスキル奪えませんって。今回はスキルは必須です。」
結構頭悪いのでは無いか?
……でもそれは使えそうだ。
「……でも、その案を借ります。」
「……どうするんだ?」
フリなのかどうか分からない。
こういう人は抜けているフリをして気付かせたりしてくる。
……知らんけど。
「留守の内に忍び込んで睡眠薬を盛っておきます。そしてぐっすりと眠っている所を殺します。最後には油を巻いて火を放って終わりです。」
「成る程な。それなら殺されたと断言は出来なくなるってわけか。まぁ上手くやらなくちゃならないが、いいんじゃないか?」
やはりフリか。
まぁ、どうであれ復讐出来るのならばどうでも良い。
「薬は俺が持ってるぞ。仕事柄毒殺とかするからな。」
するとグレンは懐からいくつもの小瓶を取り出し見せてきた。
「ちゃんと投薬する量も分かってるから安心しろ。それで、村長が不在の時は分かるのか?」
「はい。村長はこの時間帯は病院に行っている筈です。定期検診ですね。」
すると、グレンはおもむろに首をかしげた。
「毎日通わなくちゃならんほど体が悪いのか?」
「いえ、ただ通っているだけのようです。不安なんでしょうね。」
とにかく、今なら不在のはずだ。
早く行かなければ。
「さぁ、早く行きますよ。」
グレンの手を握り『隠密』を使う。
……やはり、手を握るなら女性の方が良い。
「ここですね。」
「ほー……。ずいぶんと立派な家だな……。」
グレンが家を見上げる。
「こっちは裏手なんであんまり豪華な意匠はありませんけど、正面は凄いですよ。腹が立つ程に。」
「へぇ。ま、とにかく仕込もうぜ。」
裏手の窓を開け、家の中に侵入する。
この家の窓は基本、鍵は閉められていない。
噂ではズボラだと言う。
「だ、誰!?」
家の中に入り、誰も居ないだろうと油断して『隠密』を解除した途端、見つかってしまった。
村長の妻だ。
「だ、だれか!」
「ちっ!」
すぐさまグレンが針を投げる。
数本刺さった村長の妻はすぐに眠りに落ちた。
薬が塗られた針なのか。
「おいおい。誰も居ないんじゃなかったのか?」
「……おかしいですね。本当なら一緒に定期検診に行ってるんですけど。」
さて、どうしたものか。
少し状況がおかしくなってしまったが、続行するしか無いか。
「ま、気まぐれで行動を変えることもある。世の中何でも完璧になんて……。」
「どうしました!?」
いきなり扉の戸が叩かれる。
先程の声が聞かれてしまっていたらしい。
「どうしました!?大丈夫ですか!?」
「なんじゃ!?何があった!?」
「っ!村長の声です!帰ってきました!」
あの独特な声は村長の物だ。
今日は早く終わったのか。
それともこの村の状況だ、帰らされたのかも知れない。
どちらにせよ、緊急事態だ。
「おい、どうする。」
「……俺に考えがあります。」
最悪の状況だが、何とかなる。
いや、して見せる。
それくらい出来なくてはカインへの復讐なんぞ達成出来るはずもないからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます