第13話 強敵 Ⅱ

「さて、作戦を説明する。」

 

 その日の夜、シャルが全体指揮を取る作戦会議が始まった。

 

「敵騎士団は我々の三倍はいるらしい。つまり、取れる策は奇襲作戦のみだ。」

 

 今この場にいる人数は二十程。

 偵察に出ている人、警戒に出ている人間も含めれば三十程だろう。

 つまり、相手は百近くいるということか。

 

「相手は騎士団ですけど、勝てるんですか?」

「……真っ向から行ったら不可能だ。普通の奇襲でもかなり厳しい戦いになるだろう。そこで、君のスキルを使う。」

 

 シャルが俺を指差す。

 

「あ、あの……やっぱりアルフレッド君には少し厳しいんじゃ……。」

 

 レインが手を上げ、意見する。

 それ程までに難しいのだろうか。

 

「アルフレッド君にはスキルを皆に共有してもらいたい。」

「スキルを共有?」

 

 シャルは頷くと手のひらをこちらに向けて来た。

 

「私のスキルは『糸』だ。どんな強度、長さの糸も自在に作ることが出来る。本来なら生産系のスキルで重宝されるものなんだけどね。」

「そ、それを使って前の私達みたいにスキルを共有して『奇襲』で初撃で大打撃を与えようという作戦です。」

「……それが難しいんですか?」

 

 レインは首を横に振る。

 

「す、スキルの共有はかなり精神力が問われるんです。一人や二人に共有する程度なら問題はありませんが……。ここの全員となると……かなり疲れます。」

「成る程。」

 

 それでシャルは休めと言ってきたのか。

 納得だ。

 

「だが、我々の被害を少なくさせるにはそれが最善だ。アルフレッド君には悪いが、頑張ってもらうしかない。」

「はい、問題ありません。」

 

 俺はすぐに首を縦にふる。

 シャルは案の定、意外な顔をする。

 

「そいつ等を始末できなければ俺の復讐も達成出来ないんです。やってやりますよ。」

「……そうか。すぐに済むように我々が二次攻撃で確実に仕留める。君には最初だけ頑張ってもらいたい。」

 

 すると、レインが耳打ちをしてくる。

 

「た、隊長はアルフレッド君の事をかなり心配してました。人の心がないわけじゃないんですよ?嫌いにならないでくださいね?」

「おーい、レイン。聞こえてるぞ〜。」

 

 シャルが笑顔で圧をかける。

 すると、レインはすぐに元の位置に戻る。

 

「も、申し訳ありません!」

「……まぁ、もし君の精神力が続かなかった場合の作戦も数通り考えてはある。現地で無理そうだったらすぐに言ってくれ。私もアーロン隊長の息子をこき使うのは正直気が引けるんだ。」

「分かりました。ありがとうございます。」

 

 まぁ、大丈夫だろう。

 何の根拠もないが、気力だけはあるつもりだ。

 精神力でいえばこの歳になるまで虐めに耐え続けてきたんだ。

 やってやるさ。

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